日本が原発をやめても、中国はやめない――ジョン・ハムレが問う脱原発の誤りと安全監督の責任
2024/03/20
エネルギー資源乏しい日本の脱原発は誤り
日本が撤退しても新興国の原発推進は不変
民間企業の無限賠償責任の回避へ法整備を
ジョン・ハムレ 米戦略国際問題研究所所長
John Hamre 50年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士。クリントン政権で国防次官、国防副長官。00年より現職
文中黒字化と強調は私。
日本は今年、空前の連鎖的な災厄に見舞われた。
最初に起きたのは大地震である。
地震によってすさまじい津波が発生し、東京電力福島第1原子力発電所の事故につながった。
そしてこれが第4の危機を招いている。
政府に対する信頼感の危機である。
日本は最初の3つの危機からは立ち直りつつあるが、第4の危機が最大の問題になっていると感じる。
一言で言えば、日本国民は政府に対し、原発の炉心溶融の危険から国民を守る能力があるという信頼をもはや抱いていない。
この信頼感の欠如が、日本は原子力産業から撤退すべきだとの見方を一層強めていると考えられる。
筆者がこのほど日本に1週間滞在した際にも、そうした声を頻繁に耳にした。
だが脱原発は大きな誤りとなるだろう。
日本が優れた原子力産業を育成してきたのは十分な理由があってのことである。
日本はエネルギー資源に乏しく、石油、ガス、石炭の埋蔵量が少ない。
このため論理的な帰結として製造業へのエネルギー供給を原子力に頼り、世界に冠たる製造業立国となったのである。
原子力発電で世界のトップクラスになる過程で、日本は原子炉部品供給の面でもグローバル市場で大きなシェアを獲得している。
だが、日本が原子力発電の推進で大きな成功を収めてきたやり方自体が、現在の危機の主因にもなっている。
経済産業省は原子力発電を熱心に推進する一方で、安全な原発運転に関して法的な監督責任を負っている。
これでは、野球チームの監督が審判を兼務するようなものだ。
このような体制は機能しない。
これが日本を襲った第4の危機の根本原因である。
今となっては、日本の原発は安全に運転されているとか、安全に運転を再開できるなどと、誰が言っても信用されない。
東電をはじめとする電力会社は世間の信頼を失った。
経産省も同省の管轄下にある原子力安全・保安院も、それは同じである。
筆者が話を聞いたほぼ全員が、政府は原発を適切に監督していなかったと指摘した。
このことが、多くの日本人が脱原発を唱える理由の一つとなっている。
だが前述したように、それは大きな誤りである。
中国は、原子力発電をやめるつもりはない。
そして改めていうまでもなく、日本は中国の原子炉の風下にある。
インドも原子力発電をやめない意向だし、韓国、南アフリカ、ブラジル、パキスタン、イランもそうだ。
たとえ日本が打ち切っても、世界の多くの国は原子力発電を推進するだろう。
だが原発の建設と運転に関して、しっかりしたグローバルスタンダードを定める役割は、誰が果たすのだろうか。
また、世界の商用原子力発電産業を監督し、「商用運転」を隠れみのに核兵器製造に手を染める行為を防ぐ役割は、誰が果たすのだろうか。
…以下続く。