高山正之「朝日新聞の国際報道はやはり薄っぺらだった」――イスラエル「ハレディム」の実態
2023-11-12
以下は戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであるだけではなく、唯一無二の文筆家であると同時に、隠された真実に光をあてる真の芸術家でもある高山正之の著書「日本人よ!目覚めよう」のp106からの抜粋である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
朝日新聞の国際報道はやはり薄っぺらだった
イスラエルの黒服集団「ハレディム」の実態にも迫れず
DV夫に妻が慰謝料を払う国
汚職が発覚したイスラエルのネタニヤフが起死回生をかけて総選挙に出た。
結果は大負け。
目下は連立政権を模索して苦労しているが、背景にはパレスチナ問題より深刻な国内問題があった。
先日、朝日新聞の高野遼特派員が「今、イスラエルが抱えるえぐい国内問題」を報じていた。
ところが不幸な巡り合わせというか、同じ日付でニューヨークタイムズ国際版が同じテーマの記事を載せていた。
事件ものならいざ知らず、こういう特集ものでテーマも掲載日もバッティングなんてことは滅多にない。
そういう偶然を新聞記者は最も嫌う。
視点の置き方からニュースセンスまでもろ比較され、下手すれば新聞の核まで云々される。
高野も多分、十分に滅入っていることと思うが、さて彼のイスラエル報告だ。
彼はすぐ殴る酒乱のDV夫と別れたい妻マリーの悩みを紹介する。
日本なら警察に駆け込むか、最悪でも慰謝料を放棄すれば即座に離婚できるが、この国ではどんな酷い夫でも、その夫がウンといわない限り離婚できないのだ。
高野は遠慮していわないが、ユダヤ教社会では女は蔑視されている。
ヨブ記にあるように女は半人前扱い。
女は生まれつきの淫乱で、だから髪をスカーフで包み慎ましさを求められる。
存在も不浄とされ、神聖な嘆きの壁にも触れてはならなかった。
結局マリーは慰謝料を取るどころか逆に200万円払ってやっと離婚できた。
因みに女の蔑視は孫宗教のイスラム教にそっくり引き継がれ、ユダヤ教では半人前とされた女の存在は「男の権利の2分の1」と数字化している。
スカーフの規定はそのまま「体の線も髪も隠せ」というチャドルの規定になっている。
安息日には休息まで強制され
コーランはまた「女は男が食わせているから生意気をいえば打擲してベッドで種を蒔け」ともある。
ユダヤ人世界もそんなイスラムと同じと思っていい。
「日本の女に人権はない」とか偉そうにマッカーサー憲法に女の権利を書いたベアテ・シロタは、まず彼女の祖国の惨めな女を解放すべきだった。
そんなわけで今のイスラエルには山ほどのマリーが存在する。
21世紀というのに何でそんな不条理が罷り通るのか。
高野はここで初めて「黒い帽子に黒いスーツの超正統派の人々」に言及する。
彼らは「ハレディム」という。
女を蔑視し、男優先の離婚の形を押し付けるだけではない。
ユダヤ教の安息日、金曜の夜から土曜日の日没までイスラエルの民は休息を強制され、驚いたことに雷車バスなど公共交通機関も止め、商店もスーパーも閉めさせる。
安息日にこの国にきた人は本当に苦労する。
そういう混乱を避けて営業したい店はハレディムに願い出て許可を貰う。
ニューヨークタイムズのイザべル・ケルシュナー特派員はそのハレディムが学校教育にも口を出し週9時間もユダヤ教教育を強いる暴君ぶりを報告する。
だから感化された児童は家に帰るとTシャツにショーツの母親を見て「はしたない」と軽蔑するという。
それはイスラム漬けを強制されるイラン市民とほとんど変わりない。
金で集めた敬虔なユダヤ教徒
ではなぜ黒服がそんなにのさばるのか。
両特派員は触れていないが、実はイスラエル誕生の折、世界を騙す小細工をした、それがこの異常を生んだ原因といわれる。
1948年、政治力を持つユダヤ人はレークサクセスでの国連総会で「神が与えたカナンの地」つまりパレスチナにユダヤ人の国を建てたいと提案。
33対13でイスラエル建国が決まった。
かくてディアスポラ(民族離散)で世界に散ったユダヤ人が続々エルサレムに戻ってくる。
それを見た初代べングリオン首相は当惑した。
「敬虔なユダヤ教徒が2千年間切望した建国」と世界に宣言したのに、戻ってきた民は酒は飲み、豚肉は食う。
祈りも忘れていた。
これは具合が悪い。
で、首相は世界に敬虔ぶりを見せるために一日中祈るユダヤ教徒を募った。
タダとはいわない。
徴兵を免除し、生活保護も出してやる。
イスラエルは建図した途端に第1次中東戦争をかまされ、以後、第6次まで戦争続きだ。
一般市民は18歳で3年の兵役を課せられたうえ45歳まで毎年1か月の兵役がある。
その1か月の間に戦争が起きればそのまま戦場に行く。
それをみんな免除し、カネもくれるという。
こんな有難い特典はなかった。
かくて2千人の黒服集団ハレディムが誕生した。
彼らは祈り、うまくもないコーシャミールを食う。
その腹いせに不道徳な市民を厳しく叱る。
女のくせに夫に逆らうマリーなど格好の苛め材料だっただろう。
彼らは生活保護世帯だ。
産児制限の必要はないから、何人も子を産んだ。
結果、2千人が今はイスラエル国民の12㌫、100万人にもなった。
国会にも議席を持ち「アラブ人と一切の妥協を許すな」「彼らと共存すれば彼らは目の中の棘、脇腹の茨となる」「ガザ地区を叩け」とけしかけてきた。
90年代、ラビン首相がやっとアラファトと共存を約束したとき、そういう狂信的黒服の一人が首相を背教者として暗殺してもいる。
ハレディムはもはやイスラエル社会にとって厄介以上の障害になってきた。
組織票が支えるハレディムの力
今回の選挙では膨張を続けるハレディムの生活保護を打ち切り、彼らを働かせよう、兵役も課そう、それこそアラブ人をやっつける最前線に立ってもらおうと要求する政党も出てきていた。
結果はネタニヤフの与党が数を減らしたが、ハレディム倒しの急先鋒「イスラエル我が家」も得票は予想を下回り、組織票を持つハレディムだけが笑った。
日本では信長、秀吉、家康が出て、伴天連も一向宗もおよそ宗教が政治に口出すことを厳しく諭し、禁じた。
そういう英雄も出ず、逆に宗教にすがる国の哀れさ、愚かさに二人の特派員は全く触れていないのが残念だ。
(2019年11月号)