尖閣ビデオ流出:官邸の混乱と「政治主導」の欺瞞
2010年11月26日号「週刊朝日」の大見出し記事を読み返し、尖閣ビデオ流出問題に揺れる菅政権の混乱を検証。伸子夫人の証言、仙谷官房長官の恫喝的発言、霞が関のサボタージュ、そして“イラ菅”復活の背景にある支持率急落を描き出す。政治主導の失敗とマスメディアの責任を重ね合わせ、日本政治の歪みを浮き彫りにする。
2010年11月26日号の「週刊朝日」記事に基づき、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件におけるビデオ流出問題を詳述する。事件をめぐる官邸の混乱、特に菅首相と仙谷官房長官の間の不協和音を明らかにしている。ビデオ非公開の判断が世論の不満を招き、政権の支持率急落につながった背景には、官僚との「冷戦」状態と、首相自身の情報不足があったと指摘。記事は、メディアと世論が作り上げた「政治主導」の理念が、現実には機能していなかったことを示唆し、その一端を具体的に描き出している。
何気なく、読み返した2010年、11月26日号「週刊朝日」の大見出し記事から。
2010年12月05日
米国のオバマ大統領や中国の胡錦濤国家主席、ロシアのメドベージェフ大統領らが、APEC(アジア太平洋経済協力会議)に出席するため横浜入りしたH月12日夜、日本のメディアは 「sengoku38」と名乗った海上保安官の“釈放”情報に振り回されていた。
第5管区海上保安本部が入った合同庁舎(神戸市)では、警視庁と東京地検による保安官の事情聴取が続き、100人余りの報道陣が詰めかけていた。
「地下駐車場から乗用車が出てくるたびに各社のカメラマンが取り囲んで動けなくし、カメラを窓ガラスにぶつけて中をのぞき込む。誰かが『乗ってないなあ』と言うと車が解放される。一日中、その繰り返しでした」(カメラマン)
菅首相は13日夕、念願だった胡主席との会談を果たしたが、このビデオ流出問題の余波もあってか、わずか20分間だった。
首相の“最大のブレーン”と呼ばれる伸子夫人も最近、民主党関係者にこう愚痴ったという。
「中国漁船の船長が逮捕された直後は、菅も『ビデオは公開したほうがいいよな』と言ってて、私も『そりゃそうよ』と話してたの。それが翌日、仙谷さんに相談したら、これは証拠物だから、裁判になったときにどうだ、こうだと、弁護士の法律論を言われて……。菅もそういうことはよくわからないから、そうか、と納得しちゃった。最初は公開するって言ってたのにね」
俺様が決めると
“イラ菅”が復活
伸子夫人のみならず政府・与党関係者の問ではいま、「ビデオをさっさと公開していれば、こんな事態は招かなかった」(中堅議員)との批判が渦巻いている。
ビデオが流出した直後、仙谷氏は会見で、「公務員が故意に流出させたのであれば、明らかに罰則付きの国家公務員法違反だ」と恫喝した。
疑われた海保は慌てて警視庁と東京地検に告発状を持っていったが、“政治銘柄”の案件だけに、当初から捜査陣のモチベーションは低かったようだ。
「捜査を担当する警視庁捜査1課や東京地検公安部の現場からは『何で俺たちがやるんだ』『中国漁船の船長をあんな形で無罪放免にしたのに、義憤に駆られて行動した保安官だけを起訴するのか』『逮捕したら、信頼回復どころか国民を敵に回すのではないか」「同じ捜査員として海保の保安官の気持ちはよくわかる』という声が噴出していました」(捜査関係者)
そもそも、法律の専門家の間でも、今回の映像流出を国家公務員法の守秘義務違反に問うことを疑問視する意見は少なくない。
元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士はこう指摘する。
「守秘義務違反は、①国民が知らない事実であることの証明②情報の重要性の2点が問われます。しかし、映像の概要はすでに報道されており、そもそもどの程度の秘密だったかが問題になるでしょう」
だが、こうした意見に対し、弁護士出身の仙谷氏は10日、感情をあらわにして反論した。
「新聞の社会面でも、その種のことを言う学者とおぼしき人がいるが、ちゃんとした論文に書けと言ったら書かないと思う。そんな解釈は成り立ち得ない」
そして自らが委員長となり、機密漏えいの罰則強化などを検討する実務委員会を立ち上げる、とぶち上げた。
しかし、政権や政治家の “先行き”に敏感な霞が関では、サポタージュの空気が横溢しているようだ。
菅首相は、尖閣ビデオ問題への対応でことごとくミソをつけた仙谷氏への不満を周囲に漏らすようになったという。
「菅さんはこれまで仙谷さんに面倒な問題を丸投げし、言いなりになってきましたが、最近になって『国会や霞が関の情報が全然上がってこない。これからは直接、報告してくれ。俺が決めるから』と方々へ電話を入れている。衆参の情報は古川元久、福山哲郎両官房副長官がそれぞれ集約して仙谷さんに報告してきましたが。
『それも官房長官で止まってしまう』と、菅さんはこぼしていました」(別の民主党関係者)
菅首相は、ロシア大統領の北方領土への電撃訪問も報道で知らされ、「赤っ恥をかかされた」と周囲に当たり散らしていたという。
「仙谷さんは、長いつき合いだからなのか、菅さんのことを公の場でも『総理』と呼ばず、さん付けや、ちゃん付けで呼ぶことがある。菅さんは内心、そのことも 『どっちが上だと思っているんだ』とご不満なようです。仙谷さんが外交問題でコケたおかげで、皮肉にも、菅さんはかつての“らしさ”を取り戻しつつある」(官邸関係者)
菅首相が“イラ”つく背景には、歯止めがかからない支持率の急落がある。
…以下略。
私が何度も言っているように、「ノーサイドの精神でやります」と言っておきながら、全社員の半分だけで会社経営を始めた…小人の証明…連中と、そのようにすべきだとけしかけたマスメディアの結果の、一部始終の一端を、キチンと伝えていると思う…
何気なく、読み返した2010年、11月26日号「週刊朝日」の大見出し記事から。