どんどん真っ当に成って行く日経新聞シリーズ① ― 円高と電力不足を放置していいのか

どんどん、真っ当に成って行く日経新聞シリーズ…今日の社説から。
2011年07月31日
円高と電力不足を放置していいのか            

日本経済は東日本大震災のショックから立ち直りつつあるが、景気の先行きはまだ楽観できない。急激な円高と電力不足の影響が何より心配である。この状態を放置したままでいいはずがない。

6月の主要指標を見る限り、足元の景気は着実に持ち直している。鉱工業生産指数は3ヵ月連続、輸出数量指数は2ヵ月連続で前月を上回り、震災直前の94~95%の水準まで戻った。実質消費支出(2人以上の世帯)も前月比では増えている。企業部門と家計部門の正常化が進んでいることを歓迎したい。

しかし、円高の加速は景気回復の障害になりかねない。円相場は震災後につけた最高値の1ドル=76円25銭に迫りつつある。

日銀の調査によると、今年度の平均想定レートは大企業製造業で82円59銭。
ここにきて80円に修正する主要企業が増えているが、現在の水準が続けば収益を圧迫するのは避けられない。

米連邦債務の上限引き上げを巡る混乱が円高の主因である。この問題が決着しない限り、円高を止めにくいのは確かだろう。
それでも円相場は看過できない水準にきているのではないか。政府・日銀は円売り介入も辞さない姿勢で臨むべきだ。

電力不足に対する不安も大きい。

経済産業省の予測調査によると、7~8月の生産の伸びは前月比2%程度で、5月の6・2%や6月の3・9%より低下する見通しだ。「今夏の電力使用制限が重荷になっている」との指摘は多い。

政府は国内の原子力発電所がすべて停止した場合、来夏にはピーク時の電力が約1割不足すると試算している。だが菅直人首相は29日の記者会見で、原発への依存度を引き下げる考えを強調するだけに終わった。電力供給の確たる方針を示さなければ、企業は生産や設備投資の拡大に二の足を踏まざるを得ない。

海外経済の変調も気がかりだ。米国では個人消費の低迷が響き、4~6月期の実質成長率が前期比年率1・3%にとどまった。金融引き締めが続く中国やインドの景気にも減速感がにじむ。「部品や素材の供給網を修復できれば、輸出主導で立ち直れる」という日本のシナリオに狂いが生じる恐れかおる。
今の日本経済に政策の停滞や混乱を受け入れる余裕はない。政府は「V字型」の景気回復を確実にするため、円高や電力不足への対応を急ぐべきだ。
中長期的な成長基盤の強化も要る。法人減税や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加表明をたなざらしにすべきではない。

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