トミー・リー・ジョーンズのCMをもじりつつ、筆者は日経「風見鶏」後半の論旨に同意。民主・自民双方から噴出する“嫌菅”の空気、官僚や経済人にまで広がる不信、そして「運命」という言い回しが延命策と受け取られる現状を整理し、復興のためには首相交代が不可避だとする指摘を引く。

2011年5月1日付の日経新聞「風見鶏」コラムより、東日本大震災後の菅直人首相に対する政界内外からの厳しい批判を詳述。与党・民主党内の「嫌菅」ムードや野党、官僚からの不信感の高まりを伝え、震災復興が進まない原因が首相の指導力にあると指摘しています。

このろくでもない世界で…トミー・リー・ジョーンズのCMをもじって。
2011-05-01
自分たちが為して来たろくでもない論説に対する本当の反省は未だ為されていないが、今朝の日経2面の「風見鶏」の後半部には、まともな事が書いてあった。
この体たらくが運命か
…前文略
だが、党内調整のつたなさもあって「一部の人だけで勝手に政策を変えている」との批判が勢いづく。反執行部の中堅議員は「不満のマグマはたまっている」と首相退陣への期待を隠さない。
自民党内では「嫌菅」一色の倒閣モードが強まっている。なぜ菅首相ではだめなのか。ある閣僚経験者は「民主党内の反発も極めて大きく、官僚を全く使いこなせない。野党との信頼関係も築けない」と語る。
参院自民党幹部は「決断力がない。ぶれまくる。野党気分のパフォーマンスがぬけない」と酷評。政調幹部も「菅首相は震災前に統治力を失っていた。自民党が協力できるよう、民主党も謙虚になって代表を代えた方がいい」という。
政界の空気は、菅首相が土俵際に追い込まれていた 「3・11」前に完全に戻ってしまった。
民主党内の反菅勢力や、自民党などの野党が首相退陣を求めるのは、それぞれの政略にすぎないと切り捨てることはできる。当然のことながら、民主党内には首相を擁護する声もある。政争に明け暮れる場合ではないことも明らかだ。
ただ深刻に思えるのは、政界や現役の官僚だけではなく、官邸の内情に通じている官僚OBや経済人からも「自分の延命しか考えていない」 
「菅首相を代えないと復興は進まない」という意見をよく耳にすることだ。国を挙げて震災復興にまい進しなければならないこの局面で、菅首相の悪評の多さは尋常ではない。
先の衆院予算委員会で、自民党の額賀福志郎元防衛庁長官が「震災と原発事故発生に合わせて総理の立場にいることは運命と述べている。思いあがった姿勢に多くの国民はへきえきとしている」と批判。首相が「より大きな責任を感じているという意味」と釈明する場面があった。
首相は「運命」や「宿命」という言葉を口にするが、延命に利用しようとしているようにとらえられて、反感を強めている。
もう一つひっかかるのは、大震災は人知の及ばぬものだとしても、今の立場が「運命」という首相から、この国をどう立て直すかという自らの意志が伝わってこないことだ。
政治の体たらくが「運命」なら、有権者は救われない。こんな状況を招いた責めの多くは、やはり菅首相が負うしかあるまい。
(編集委員 西田睦美)



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