日銀は世界の多くの国で採用されている量的緩和策もインフレターゲットも拒否して、世界で最も深刻なデフレを引き起こした。 その結果、円高が急激に進行し、日本の輸出企業はアメリカや中国、韓国の企業に対して競争力を失った。

提言 震災で浮き彫りになった規律という強みと変化を嫌う弱み
復興の成否は、調和を乱してでも挑戦する姿勢に懸かっている     
ピーター・タスカ(投資顧問会社アーカスリサーチ・アナリスト)
復興財源と原発について…私の提言。http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=24de9a5cb7daba45b3d0939c516728aa
と重ねて読んでみて下さい。
既述したように、ピーター・タスカは、梅棹たいじんとは違う意味…日本国の経済を見ている視点で、私と似たような頭脳を持っている英国人です。

大災害ほど、国民性を際立たせるものはない。東日本大震災後の対応には、日本の強みと弱みがはっきり表れている。
見えてきた強みは、一般の国民の勇気、決意、規律
弱みであることが分かったのは、財と官の過度に緊密な関係、戦略的思考の欠如、政治的リーダーシップの空白だ。
震災で浮き彫りになった弱点は、世界の畏怖と称賛の対象だった経済大国が経済失政の反面教師と見なされるようになった原因とも重なる。

重要なのは、震災後の日本でこの強みと弱みのどちらが強く表れるのかという点だ。
いま日本経済が苦しんでいる原因は、経済というより政治にある。
それは、不可抗力ではなく人災だった。

「失われた20年」の前半10年は、やむを得ない面もあった。
歴史上有数の大きなバブルがはじければ、金融システムが打撃を受け、バブルの後始末のために痛みを味わって当然だ。
しかし後半10年は、バブルのせいにできない。
バブルはもはや遠い昔の話だ。
この10年の停滞は、日本人と日本政府が重ねてきた選択の結果だ。

その選択とは概して、「何もしない」という選択だった。
現状維持の心地よさを優先させ、新しいものや不確実なものに取り組むリスクを避けてきた。
実際は、現状維持のほうがリスクは大きい。
その先には衰退が待っている。


「黒船」を呼び戻すために 
日本経済に最も大きな影響を及ぼしてきた選択は、日銀の金融政策だ。
日銀は世界の多くの国で採用されている量的緩和策もインフレターゲットも拒否して、世界で最も深刻なデフレを引き起こした。
その結果、円高が急激に進行し、日本の輸出企業はアメリカや中国、韓国の企業に対して競争力を失った。

アルプスのないスイスなど思い浮かべられないように、世界に冠たる自動車産業のない日本は今も想像しづらい。
しかし、世界で一番「ホット」な家電新製品を送り出すのが日本企業でなくアップルやサムスンやノキアになるなどと、20年前に誰が予想しただろう。
日銀の不手際があと20年続けば、どの産業が衰退しても不思議でない。

 
日銀の金融政策に加えて、もう1つ見過ごせない要素は、財政規律重視路線の選択だ。
09年の総選挙で、民主党はマニフェスト(政権公約)で成長重視と家計支援を前面に押し出して政権を得た。
ところが、その路線に基づいて打ち出された強力な政策は、子ども手当の実施くらい。
1年もたたないうちに、民主党政権は態度を豹変させた。
財政破綻の恐ろしさをことさらに強調し、消費税の大幅増税を唱え始めたのだ。

緊縮財政を緩和すべき状況があるとすれば、大震災後の今をおいてほかにない。
被災者の生活の改善や被災地の再建などのために、莫大な資金が欠かせないからだ。

それなのに、日本政府は相も変わらず財政規律重視、新規国債発行には反対、と唱えるばかり。
「被災者のためにどんな犠牲でも払いたい」という国民の気持ちを利用して、消費税増税による財政再建を推し進めるつもりらしい。
どんな問いに対しても、政府は「消費税の税率アップ」しか口にしない。

このほかの領域でも、思い切った変化が必要だ。
現状維持が安心をもたらすというのは幻想にすぎない。
 
例えば、中国などの新興国は政府系ファンド(SWF)を国家政策追求の手段として積極的に活用しているが、日本は主として短期の米国債で外貨準備を運用するにとどまっている。
日本版SWF計画は、「損をする恐れがある」という理由でつぶされたのだ。

東京を世界の金融センターにする必要性が叫ばれて久しいが、
…後略。

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