京大iPS細胞、米国で特許成立—医療・創薬研究の加速へ

京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞の遺伝子技術が、最大の医薬品市場を持つ米国で特許として認められました。これにより、高額な特許使用料の懸念が払拭され、国内外の研究者が安心してiPS細胞を活用できる環境が整い、医療や創薬研究のさらなる進展が期待されます。

京大iPS 米で特許 医療・創薬研究に弾み…朝日新聞8月12日1面より
2011年08月12日

京都大は11日、山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)をつくる遺伝子技術の特許が米国で成立したと発表した。同様の特許は日本を含む5力国2地域でも成立している。

医薬品で最大の市場規模をもつ米国で認められたことで、実用化に向けた研究も加速しそうだ。

米国では、先に出願した人ではなく、最初に発明した人に特許が認められる。米国で特許が成立したこと
で、現時点では、皮膚などに分化した体細胞を初期状態に戻す手法を最初に特定したのは山中教授だと、改
めて示されたことになる。

記者会見した山中教授は「特許の成立はゴールではない。一日も早く治療や創薬の技術として実用化できるよう、研究を進めたい」と話した。

今回認められたのは、細胞を初期化する3種類の遺伝子などを使う、2パターンの組み合わせ。似た構造の遺伝子を代わりに使った場合も認められる。

この組み合わせを使ってiPS細胞をつくる行為にも権利が及ぶという。欧州では遺伝子からつくられるたんぱく質も特許に含まれたが、米国では認められなかった。

医薬品の市場は日米欧で世界の8割を占めるとされる。iPS細胞を含め、医学研究をめぐる特許競争は世界で激化している。営利企業などに基本的な特許を押さえられてしまうと、高額の使用料が発生したりして、研究の障壁になると心配されていた。

京大の松本紘総長は「公的機関の京大が特許権を持ったことで、国内外の研究者が安心してiPS細胞を使えるようになる」と述べた。京大によると、特許の成立は5日付で通知された。特許を持つ期間は2027年6月ごろまでとみられる。

(木村俊介)

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