嵐山・深まる秋の静けさ――二尊院・常寂光寺・大河内山荘・天龍寺をめぐる“秋のアダージョ”

2025年の京都・嵐山は、久しぶりに本来の静けさを取り戻し、光と色の深まりを心ゆくまで味わえる秋となった。二尊院から常寂光寺、大河内山荘、天龍寺へと巡りながら、雲間の光が紅葉を照らし出す情景は、まるでクラシックのアダージョのように緩やかに心を満たしていく。京都の紅葉が持つ本質的な美と静謐を記録した撮影記。

2025年の嵐山は、例年とはまるで異なる静けさに包まれていました。
特定の国からの団体観光が途絶えたことで、京都本来の落ち着きが戻り、
谷間を渡る風や苔むした石段の足音さえ、はっきりと感じられるほどの穏やかな空気が流れていました。

二尊院から常寂光寺、大河内山荘、そして天龍寺へ――
名所を巡る道のりは、まるでひとつのアダージョのようでした。
雲間から差す光が次第に深まり、木々の色が重なり合い、
赤、橙、金色の葉が風に揺れる様子は、まさに緩やかに高まっていく旋律そのものです。

常寂光寺では、山頂から下りはじめたその瞬間、
ふいに太陽が本格的に姿を現し、
参道のすべてが柔らかな光に染め上げられました。
その光景は、クラシックの名曲のアダージョが
静かにクレッシェンドしていく瞬間に重なり、
時間までもが緩やかに伸びていくような感覚を覚えました。

大河内山荘の庭園はちょうど紅葉の盛り。
静まり返った空間に、風の音と鳥の声だけが響き、
京都の秋が持つ本来の深さと品格が余すことなく姿を現していました。

そして天龍寺。
太陽は再び雲に隠れましたが、
幾度も訪れた“勝手知ったる庭”に漂う落ち着きは変わらず、
まるでアダージョの最後に訪れる静謐な余韻のように、
深い安らぎをもたらしてくれました。

――静かな京都が息を吹き返した一日。
光と影、色と香りが交わる“秋のアダージョ”を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください