一人の焼身から始まった「アラブの春」の裏側――ヒラリーと米民主党の干渉、ソレイマニ排除の本当の意味
本稿前半では、モナコ王立バレエ学校の老教授の言葉を手がかりに、「隠された真実に光を当てる」という芸術家の本質と、その意味で戦後世界で唯一無二のジャーナリスト=芸術家と呼ぶべき高山正之の位置づけを論じる。後半では、高山氏の著作『日本人よ!目醒めよう、プーチン・習近平・金正恩・朝日新聞の嘘を見抜く』所収の一編を紹介し、一人の焼身自殺から始まったチュニジア動乱と「アラブの春」、その背後でSNS・グーグル・米メディア・ヒラリー国務長官が果たした役割、ベンガジ事件とシリア武装支援の実態を詳述。さらに、イラン革命防衛隊ソレイマニ司令官の排除を、米民主党が蒔いた「干渉の種」を刈り取る行為として位置づけ、朝日新聞の中東報道を「翻訳員」と断じる鋭いメディア批判へとつなげる必読の論考である。
一人の焼身自殺で政権が崩壊…「アラブの春」の裏にヒラリー…ソレイマニ排除は良心からだ
2023年10月23日
以下は、2022/9/1に、「日本人よ!目醒めよう、プーチン・習近平・金正恩・朝日新聞の嘘を見抜く」と題して出版された高山正之の著作からである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
随分前に、世界中のプリマから大変な尊敬を受けているモナコ王立バレエ学校の老女性教授が来日した。
その時に彼女が芸術家の存在意義について語った言葉である。
『芸術家が大事な存在なのは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する事が出来る唯一の存在だからです。』
彼女の言葉に異議を唱えるものはいないだろう。
高山正之は戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであるだけではなく、戦後の世界で唯一無二の芸術家と言っても全く過言ではない。
一方、大江…彼については、故人を悪くは言いたくないが。
村上等、作家と称する人間達、自分達を芸術家だと思いこんでいる人間達の多くは、芸術家の名にも値しない存在なのである。
何故なら、彼らは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する、どころか、朝日新聞等が作り出した嘘を表現して来ただけの人間達だからである。
彼らの様な存在は、日本に限らず、世界中の国においても同様なはずである。
つまり、真の芸術家とは、極少数しか存在していないのである。
私が、今の世界で、最もノーベル文学賞に相応しいのは、高山正之を措いて他にはいない、と言及している事の正しさを、本論文も見事に証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。
朝日新聞の中東記事は特派員というより翻訳員
米民主党の干渉は民主化と褒めトランプがやれば罵倒とは!
一人の焼身自殺で政権が崩壊
一昔前、中東イスラム圈が鳴動したことがある。
最初に揺動したのはチュニジアだった。
歴史は古い。ポエニ戦役の最後、カルタゴを滅ぼすきっかけを作ったヌミビア国がその前身だ。
だからローマ時代のコロッセオからイスラムのモスクから地中海を望む高級リゾート地もあって、欧州の避暑地として栄えてきた。
政治も安定し、ベン・アリがイスラムの縛りを緩めた世俗的な政治を行い、女性はチャドルから解放され、レストランでは普通にワインが飮めた。
失業率がやや高いくらいで、どう見ても政治混乱とはかけ離れた国に見えたが、10年12月、南部の街で若者が焼身自殺をしたのを機に、まさかの騒乱が起きた。
当時の報道によれば、朝市で露天商の許可を持たない青年が役人に咎められ、売り物の野菜を没収された。
抗議したら婦人警官にぼこぼこにされた。
習近平の支那だったらごく日常のできごとだが、少し違ったのは青年が抗議の焼身自殺を図り、それがSNSにアップされて抗議のデモが即座に巻き起こったことだ。
制圧する警官が銃を抜き、死者が出てまたそれがアップされる。
騒ぎは日を追って異様に拡大していった。
香港の騒ぎと同じに、政権は力で抑え込んだうえに報道管制を敷く。
が、ここからグーグルが情報拡散に一役買った。
さらに米メディアが事件を報じ、騒ぎは国際化し、焼身自殺から2週間ほどで首都チュニスでもデモが渦巻き、暴徒と化した市民が銀行、官公庁を襲い、もはや治安は失われた。
焼身自殺が起きてから僅か28日後、政権は崩壊し、この国に23年間君臨してきたベン・アリはサウジに亡命した。
米紙は「長期にわたって国民を支配した独裁政権は倒された」「国民は民主化運動の花を咲かせた」と報じた。
世にいう「アラブの春」はここから始まり、もっと盤石に見えたエジプトが揺さぶられてムバラク政権が潰(つい)え、さらにはリビアのカダフィ政権にも飛び火した。
「アラブの春」の裏にヒラリー
カダフィはかつてパンナム機の爆破テロもやった。
砂漠の狂犬と呼ばれた。
その一方でイスラムの旧弊を廃し、女性の教育にも熱心だった。
旧弊の一つの4人妻制では2人目の妻からは正妻の認可を取ることを義務付け、事実上、この悪弊を廃した。
それでも反カダフィ運動が巻き起こり、彼らは政府軍以上の最新鋭兵器で渡り合った。
SNSはカダフィを罵り、米メディアもひたすら砂漠の狂犬を倒せと囃した。
NATOもリビアの民主化に協力して空車は5千回も出撃した。
まるでパンナムテロの報復戦に見えた。
かくてカダフィは反政府運動か始まって7か月後の11年10月20日、砂漠の果てで殺害された。
米紙は独裁者を倒したリビアの民の民主化運動の成就を喜んで見せた。
「アラブの春」が次々成功したのは一つにSNSによる情報の拡散がある。
政権が情報遮断を試みてもグーグルやフェイスブックが別のルートから情報を流した。
CNNなど国際報道もそれ以上の関心を持って「民主化」を喧伝した。
ただ、なぜ反政府組織が政権側に勝る武器や地上兵器を持ち合わせていたのかは謎のままだったが、それを解く事件がカダフィの死後1年目に起きた。
それがベンガジ事件だった。
発端はベンガジの米総領事館をイスラム過激派が焼き討ちし、C・スティーブンス米大使ら3人が殺された。
なぜそこに米大使がいたか。
「実は次に民主化運動が始まったシリアの反政府組織向けにベンガジから武器を送り出す作業をやっていた」(渡辺惣樹『アメリカ民主党の崩壊』)からだ。
つまり一連の「アラブの春」の裏には米国がいた。
指揮は国務長官ヒラリーが個人メールを使ってやっていたことが事件を機に明るみに出た。
ソレイマニ排除は良心からだ
作戦の意図は中東指導者のうち目障りな人物の排除にあった。
カダフィとアサドが標的であとは巻き添えだった。
暴動を起こすのにSNSが使われ、反政府運動を拡散した。
米メディアも支援し、必要な武器が送り込まれてきた。
実際、シリアに向けて船積みされた武器がレバノンによって押収されてもいた。
トランプはこうした米民主党の汚い他国干渉を嫌い、米国本来の不干渉モンロー主義に引き戻そうとした。
朝日新聞はトランプを内向的と批判するが、それはヒラリーらと組んできた米メディアの言葉をただ直訳したものだ。
その朝日が先日、イスラム政権打倒を叫ぶイラン市民に向けてトランプが「長年苦しんできたあなたたちと共にある」とツイートしたのを「デモを煽る発信」(渡辺丘特派員)と非難した。
民主党が干渉すれば民主化と褒め、トランプがやれば罵倒する。
渡辺某は「特派員」より「翻訳員」とした方がいい。
米国には実は40年前、中東を結束し欧米メジャーに対抗しようとしたイランのパーレビ皇帝を「アラブの春」と同じ仕掛けで葬り、ホメイニ師のイスラム革命を実現させた過去がある。
皇帝は潰せたが、ただ革命政権は北朝鮮より残酷な恐怖政治をやった。
酒を飲んだり、生ハムを食べたりしただけで鞭打たれ、不倫や売春は公開処刑された。
そんな無茶をアラーの名で公然とやったのが革命防衛隊だった。
イスラム坊主も彼らに歯止めできなかった。
古くは米大使館襲撃を実行し、日本大使を逮捕し、最近では安倍首相が最高指導者に会ったとき、日本のタンカーを爆破した。
そして今回は民間航空機を撃墜した。
トランプは米民主党が蒔いた種を刈り取る良心があった。
革命防衛隊司令官ソレイマニを排除し、彼らに歯止めがかけられる者が存在することを教えた。
狂気の宗教政権は40年続いたが、それが永遠でないことも市民に伝えた。
それがツィートの意味だ。
特派員は翻訳でなく少し考えて記事を書いてほしい。
(2020年2月号)