世界は沈没を余儀なくされた。しかし、それは中国依存を深めたグローバル化の代償ですね。これからパラダイム・シフトが起こります。

2020/6/18
以下は5月1日に発売された、宮崎正弘VS渡邊哲也の「コロナ大恐慌 中国を世界が排除する」からである。
第4章
グローバリズムの正体は世界経済の中国依存
宮崎 
本章では中国経済の失墜が世界経済に与える影響を眺めていきましょう。
まるでイカロスの墜落のようだ(笑)。 
武漢コロナの感染爆発により明瞭となったのは、グローバリズムというのは突き詰めて言えば世界経済の中国依存にすぎなかった、ということではないでしょうか。
少なくともユーラシア大陸の東半分と太平洋においては。
03年には世界のGDPの4%にすぎなかった中国経済が今や2割を占めます。
アメリカにしろ欧州にしろGAFAにしろ、「工場としての中国」の活用と「市場としての中国」から利益をあげようとした。
一方の中国も欧米やグローバル企業を利用して世界の「中国化」をもくろんだ。
両方向から世界経済の中国依存が高まり、それとともに西側社会は政治の中国化を黙認した。
中国搾取VS中国化の構造がいよいよ真面化し先鋭化したのが米中貿易戦争に始まる「覇権戦争」で、アメリカ政府は中国排除に舵を切り、世界にもそれを要求しています、が、すでに中国にビルトインされていた世界各国はヒト・モノ・カネというすべての面で脱中国が容易ではないことを再認識する。
アメリカの圧力によって国内の親中派の害悪があぶりだされても技術的な依存からファーウェイ排除に踏み切れない。
英国でさえそうなのだからEU諸国、アジア、アフリカなどはいうに及ばず。
米中激突のはざまで逡巡していたところに武漢コロなが急襲し、否応なくヒ卜の排除に踏み切った。
ヒトが来なければ自ずとモノとカネも止まる。
世界は沈没を余儀なくされた。
しかし、それは中国依存を深めたグローバル化の代償ですね。これからパラダイム・シフトが起こります。
渡邊 
同感です。
生活物資からインフラまで他国へ委ねすぎていた。
この問題は日本だけでなく、米国でも発生しており、特に医療分野(マスク等)が大きな問題になっています。 
また、欧州では生活物資の生産や流通の共有が進んでいた中で各国が自国優先主義を取り始めたため、この分断も起き始めているわけです。
ドイツやフランスなどは医療関連の物資の輸出を禁じ、結果的に他国にいきわたらなくなりつつある。
短期的な株価など指標によるパニックよりも、実は、こちらのほうが大きな問題であり、世界の社会構造に大きな変革をもたらす可能性が高いといえます。 
それから世界経済についていえば、問題が構造上のものである限り、武漢コロナにより危機が早まっただけのことで調整局面を迎えていることに変わりはありません。 
これまでの世界経済はグローバリズムのもと、中国に代表される新興国の「工業化」をグローバル企業が投資することによって経済成長を達成してきた。
「世界の工場」となった中国の安価な製品を大量に買ってくれたのがアメリカだった。
いわば中国とアメリカ、というよりも、中国共産党とグローバル企業が最も恩恵を受ける構造になっていて、その需要を支えていたのがアメリカ国民、だった。
しかし、中国の工業化は先進諸国の製造業の空洞化を招き、雇用を奪い、その反動としてアメリカファーストを唱えるトランプ大統領が登場し、米中蜜月から米中対立に突き進んだのは周知の事実です。 
以後、世界は国境の壁を高くする反グローバリズムーヒト・モノ・カネの移動を制限する経済構造に逆回転していた。
要するに世界はアメリカの消費に頼れなくなり、自国の消費を高める内需主導の経済構造に転換しなければならないわけですが、武漢コロナによりその回転速度が早まった。
ために直面しているのが内需拡大どころか「需要ショック」です。
金融危機だったリーマンショックとの違いはここにあります。宮崎 
世界経済を支えていたアメリカの消費はクレジットカードやサブプライムローツのような借金と株や債券といった資産価格により生み出されていました。
米国民の80%の実質賃金は1970年代から上かっていないという報告もあります。
したがって、家計の債務が膨張し学生ローンの残高は天文学です。
株価が下落すると消費は減退することになる。
良くも悪くもトランプが株価にこだわるのは当然なのです。
後略。

コロナ大恐慌 中国を世界が排除する   宮崎正弘 ビジネス社