藻類によるバイオ燃料…デンソーと筑波大。

東日本大震災により東京電力福島原子力発電所が被災し原子力事故が発生したことにより、新たなエネルギー源として再びバイオ燃料に注目が集まりだしている。

バイオ燃料で実用化が進んでいるものの代表格としては、トウモロコシやサトウキビなどを原料とするバイオエタノールが挙げられる。しかし、陸上植物を原料とするバイオ燃料は、食物資源を利用することや栽培に大量の水を利用するうえ、生産効率が高くない。例えば、米国では年間5億3000万キロリットルのガソリンを消費しているが、トウモロコシから生産されるバイオエタノールはその9%の4900万キロリットルにすぎない。しかし、このために年間約3億トン生産されるトウモロコシの約30%(約9000万トン)をバイオエタノール用に使用している。

そこで今、注目を集めているのが藻類によるバイオ燃料だ。藻類は同じ面積からトウモロコシやサトウキビなど陸上植物の生産量の10倍の生産が可能。そのうえ、二酸化炭素(CO2)の吸収力も高く、発電所のCO2吸収源としても検討されているほど。さらに、細胞内に含まれる油分はほぼ重油並みで硫黄分も含まれていないことから、リファイナリー原油としての利用が可能だ。

日本では旧通産省が1974-93年にサンシャイン計画、経済産業省が93-2000年にニューサンシャイン計画のなかで藻類をバイオエネルギー化する研究が実施されたが、いまだに実用化はしていない。

最大の課題はコスト。現在でも、藻類からはクロレラなどの健康食品が製造されているが、1キログラムで10万円から高いものでは100万円もする。また、飼料用の藻類は1キログラムで1000円から1万円程度。しかし、藻類をバイオ燃料として利用する場合には、1キログラムで100円程度の価格まで下げなければならない。

10年12月に筑波大学の研究チームが、「オーランチオキトリウム」という藻に注目し、東京湾からベトナムの海などで150株を採取したところ、沖縄県の海で発見した新種の藻類は、これまでの10倍以上の生産能力を持っていることが明らかになった。これが大量培養できれば、藻類のバイオ燃料が実用化する可能性は大きい。デンソーはかねてから藻類バイオ燃料を筑波大と共同研究中。研究の進ちょくは要注目だ。(鈴木 透)

提供:モーニングスター社 (2011-04-15 09:49)

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