品質では中国企業にライバルはいない…坂製作所(京都市)。4/19日経31面から。
精密加工メーカーの坂製作所(京都市)は自動車部品や半導体の製造装置など幅広い分野を手掛ける。国内の従業員数は18人という規模だが、中国に35人が働く加工工場を展開する。円高やコスト高で、国内の製造大手が中国など海外に生産拠点を移転する動きに対応しようと2007年に現地法人を設立した。中国工場では生産コストが半減。高品質を強みに同工場の生産量の約8割は中国に進出した日本企業から受注する。
「兄弟2人いるなら思い切って1人は中国に出てみないか」。06年、坂栄孝社長は弟の社員、和孝氏と事業展開について話し込んだ。業績は順調だったものの、製造大手からの受注がほとんどを占める業態では大手の海外展開は脅威そのものだった。話し合いの結果、06年9月に和孝氏が通訳、運転手と3人で中国に乗り込んだ。
07年3月に坂制作香港を設立、8月には深川市に270平方メートルの工場を設置したが、ノウハウを持たない中小にとって苦難の連続だった。工場の操業が軌道に乗りかけた際に大型連休で帰京した従業員がほとんど戻ってこず、途方に暮れたこともあった。それでも事業拡張を続け、10年4月には東莞市に工場を拡張移転。経営ビジョンを従業員に説明した結果、「11年の旧正月には初めて全員が戻ってきた」 (坂社長)という。
「品質では中国企業にライバルはいない」。人件費高騰で価格競争力の低下は余儀なくされるが、品質への自信は変わらない。最重要となる材料の購入ルートや検査、管理は不断の見直しを実施。日本製の加工機を使い加工方法もマニュアル化しているため、現地従業員も高精度な仕事が可能だ。中国での年間売上高は1億円を超え、国内のほぼ半分に上っている。
現在、大阪の中堅メーカー谷共同出資して中国に企業を一設立することを検討する。中国政府が進出企業に求める資本金の増加は、中堅・中小にとって大きな負担。共同出資で負担軽減をめざす。