ニッポンの企業力…日経新聞1月18日1面より
かつて、構造不況業種といわれた「繊維」の逆襲が始まった。
…中略。
強者と組み最高益
その東レが炭素繊維カーの実用化に向け、最初のパートナーに選んだのは独ダイムラーだ。
…中略。
苦節50年–。一見、華やかな炭素繊維だが、1960年代に開発を始めて以来、何度となく存続の危機にさらされてきた。東レは欧米勢が撤退しても開発を続け、今や世界で40%のトップシェアを握る。
「赤字覚悟で投資をやり抜く粘り強さが当社の強み」と社長の日覚昭広(63)は言う。
粘り腰だけではない。高機能繊維は「ユニクロ」のファーストリテイリング、半導体材料は韓国サムスン 電子、航空機向け炭素繊維は米ボーイング……。グローバルで競争力のある商品を生み、各業界の強者と組むしたたかさも強みだ。
同じくレーヨンが祖業のクラレも文具のりの素材を応用した液晶パネル材料 「ポバールフィルム」で8割の世界シェアを握る。合繊メーカーから脱皮した2社は2012年3月期にそろって最高益を見込む。
繊維各社は50年代からの繊維不況を経験。生き残りに向け素材の用途開発や海外展開を加速した。いわば他業種に先駆けて空洞化を経験し、そこから数十年かけて完全に復活。
…中略。
「これでフィルムの代わりになる」。鉄と同様、素材の変容が難しいとされてきたガラス。旭硝子が昨年厚さ0・1ミリで折り曲げ可能なガラスを開発した。
コア技術の薄型化を究極のレベルにまで進め「曲がらない」という常識の壁を越えてみせた。将来は次世代照明などへの採用を目指す。
旭硝子は素材業界の中ではいち早く世界市場に進出し、海外売上局比率はすでに6割を超す。
…中略。
「素材企業が研究開発など30年先を見据えて経営する時間軸を他の産業も見習うべきだ」
…後略。