天声人語…朝日新聞1月25日1面より

孔子と弟子たちの言行を記した「論語」には「女」という文字が19回登場するそうだ。とはいっても、うち17回は「汝」の意味で使われ、女性という意味では2回しか出てこない。その一つが、よく知られた「女子と小人とは養い難し」だという

▼中国文学者の一海知義さんが故・加藤周一さんとの対談で述べていた。天下国家は男の仕事、という意識だろう。いわゆる儒教文化圏の日本で、議会や経営への女性参加が少ない遠因は、その辺と無縁ではなく思われる

▼女性の国会議員は増えてはいるが、衆院ではまだ11%しかいない。お隣の韓国より低く世界で120位あたりにとどまっている。そうした停滞に風を吹き込む朗報だろう。滋賀県大津市長に女性最年少で越直美さんが選ばれた

▼女性首長の率は国会議員より寂しい。知事は47人中3人、市長は787市でわずか15人。嘉田由紀子さんが知事を務める滋賀は、これで県と県都のトップに女性が立つ。全国初の二人三脚となる

▼米国で学び、働いた越さんは「ガラスの天井」という言葉をご存じだろう。女性の進出を阻む見えない障壁を言う。米国でも、この天井に頭をぶつけて大勢が沈む。障壁を青天井に変えていくパワーを、ここは期待したい

▼「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元英首相が言ったそうだ。「政治の世界一では、言ってほしいことなら男性に、実行してほしいことなら女性に頼むことです」 (『名言の森』から)。さわやかな手腕を、存分に振るってほしい。

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