復興始動 閉塞感破る企業の息吹②…日経新聞1月25日1面より
…前章からの続き。
「まさか自分が起業するなんて」。宮城県気仙沼市のサメ皮製品を売る「シャークス」の社長、熊谷牧子(52)は言う。震災前、熊谷は別のサメ皮製品販売会社に勤める一介の社員だった。
会社が津波に流され途方に暮れていた熊谷に起業を持ちかけたのは「三陸復興トモダチ基金」。仏経済学者ジャック・アタリが設立した非政府組織(NGO)と気仙沼信用金庫が運営している。
基金は被災地の助成が目的で信金のもうけはない。しかし気仙沼信金は地震と津波で全12店のうち7店が全壊しており 「地域に資金を供給するために、ためらってはいられなかった」(常務理事の高城明=61)外資を呼び込み、起業を増やす。
廃業数が開業数を上回る状態が続く日本で、経済活性化の方策として長年、叫ばれてきた課題だ。しかし平時には頭で分かっていても体が動かない。
民間銀行の中小企業向け融資残高は170兆円強と1990年代半ばのピークから35%も減少している。だが危機に直面した人々は果敢にリスクを取り始めた。日本政策金融公庫が震災後の9ヵ月に宮城県で実行した創業者向け融資は前年同期比20%増の398件。岩手県は30%増の83件に及ぶ。
…次章に続く。