府立大との経営統合は? 規模生かし新しい視点で研究を…朝日新聞1月27日19面より
大阪市立大 西澤良記 学長
…前略。
経営統合が実現すれば、学生数は約1万6600人となり、公立大学法人として全国最大になる
その規模を生かしたいのに、法が足かせになっている。地方独立行政法人法で、国立と違って長期借入金や債券発行ができない。起業家に出資もできない。営利事業を許さない仕組みだ。制約が多すぎて長期的な展望が描けない。
たとえば、都市のサラリーマンを対象に抗疲労研究を進める健康科学研究の拠点を作る予定だが、そこに健診スペースを併設することもできない。営利事業にあたるからだ。こんな規制こそ、公立大学設置団体協議会の会長でもある橋下市長に外してもらいたい。
地域に根ざした研究を掲げる一方で、大学のグローバル化も目標にしている。矛盾するのでは?
いま、世界中どの都市でも格差が拡大し、ひずみが起きている。福祉や防災の課題はもはや世界の都市に普遍的なものだ。足元の大阪を考えることは世界に通じる。
そのためにも、現場を足場にしたまちづくり活動を大切にしたい。2006年につくった「都市研究プラザ」を拠点に、大阪の豊崎地区では大正時代の長屋を手織り工房として再生した。
大淀地区では不安定雇用の若者を地域清掃に受け入れる仕組みをつくった。いずれも市民との協同だ。
都市研究の成果を世界の学者と共有するため、09年に季刊の英文学術誌「シティーカルチャー・アンド・ソサイエティ」を創刊した。単一の大学が文系の学術誌を持つのは珍しい。今後も世界への発信を強化したい。
(阿久沢悦子)