「グレイトフル・デットにマーケティングを学ぶ」B・ハリガンーD・M・スコット著

日経新聞1月29日20面より
ネット登場前の「フリー」モデル
1960年代から米国で人気の高かったヒッピーバンド 「ケレイトブル・デッド」のビジネスモデルを紹介する。
ライブ会場では録音もおとがめなし。高音質で録音できるよう専用の場所も設けてファンを迎えた。会場で録音・録画した素材はコピーし放題。
とてもビジネスとして成立しないように思えるが「ビートルズやローリング・ストーンズよりももうけてしまったバンド」という評価も得た。音楽業界ではレコードやCDをどれだけ売りさばくかが目的とされ、ライブはその手段だった。
だがグレイトフル・デッドはライブに趣向を凝らして観客を飽きさせず、熱狂的なファンを増殖させた。従来の収益モデルを百八十度転換し、鉱脈を発見した。
この一風変わったバンドの戦略を今日的なマーケティング用語で説明すると、ソーシャルメディアを駆使した「シェア」「フリー」ということになるだろう。
しかし、ネットが存在しない時代でもこうした手法は存在し、通用していたことになる。ネットは世の中を変革するといわれるが、本書を読めばネットは触媒にすぎないことがわかる。
常識を疑い、顧客志向を貫いて中間業者を排除し、顧密との接点を持ち続ける。シェアもフリーも、世の中を変えていこうと奮闘した古典的か商人道の考えに近いのかもしれない。
糸井重里監修・解説、渡辺由佳里訳。(日経BP社・1700円)

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