「平等と効率の福祉革命 新しい女性の役割」イエスタ・エスピン=アンデルセン〈著〉
朝日新聞1月29日14面より
豊富な裏付けから子育て支援を提言 評・山形 浩生 評論家
…前略。
女性が働きやすいよう保育園の整備を、というだけではない。児童の知的発達は赤ん坊の頃に相当決まってしまう。その時期に親が育児に時間と資源を投資しないと、学業面でも所得面でもハンデを強いられる。
ところが低学歴で低所得の世帯は雇用も不安定だし、慣習からも育児に投資しない/できず、その子供も低学歴・低所得になる。似た者同士の結婚でそれがさらに強化されてしまう。これが現在の格差固定と拡大の一因だ、と著者はいう。
だったら、家庭の育児改善に公共がもっと投資しよう。ホントは赤ん坊を全部取り上げて国が平等に育てたいところだが、そうもいかない。だったら所得支援、育児補助、就学前教育の充実などにもっと投資すべきだ。
それは女性の社会進出のみならず、経済全体の人材底上げにもつながり、高齢化社会の課題への取り組みも容易にする!
議論はすべて統計的な裏付けを持ち、また経済学や脳科学的な発進論の成果も取り入れて、堅実ながらもきわめて斬新。また評者のような素人の驚く指摘も多い。
高福祉とされる北欧諸国は、その分だけ税金で取られるので実は見た目ほど高福祉でないなど。
…後略。