グアム移転見直し 米、中国包囲へ分散 他…日経新聞2月5日2面より
【ワシントン=中山真】米政府が沖縄の海兵隊のグアム移転計画を見直す背景には、アジア太平洋地域を重視するオバマ政権の新たな国防戦略の存在かおる。
新戦略では国防予算の削減を進める一方で、インド洋などへ海洋進出を急ぐ中国を脅威と指摘。費用のかかるグアム移転を縮小し、インド洋につながる東南アジアなどに分散配備する狙いがある。
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冷たい米中の晩さん
…前略。
オーストラリアからフィリピンヘーー。これは先の大戦で旧日本軍から南シナ海を奪還するため、マッカーサーかたどった足取りと同じだ。違うのは相手が日本ではなく、台頭する中国だということである。
「オバマ大統領やクリントン国務長官らの対中観は本当に厳しい。中国の強硬な行動によって何度も期待を裏切られたと思っているからだ。中国にらみのアジア回帰は強まるだろう」
昨年末にクリントン氏とこの問題を話したという米外交専門家に聞くと、こんな答えが返ってきた。オバマ政権としてもはじめからけんか腰たったわけではない。むしろ話し合えば、協力できると思っていた。
だが、待っていたのは南シナ海などでの強硬な対応。毎年の閣僚級の戦略対話でも「中国側ははじめから、1時間以上も主張をまくしたてる始末だった」(米中関係筋)。
そして1年前、オバマ氏が対話への期待に見切りをつけるできごとが起きた。米中首脳会談の前日の昨年1月18日夜。オバマ氏はワシントンに着いた胡錦濤国家主席を異例のもてなしで迎えた。
公式の会談や食事会とは別に、ホワイトハウスでごく少人数の夕食会を開いたのだ。同席者は側近の4人だけ。会話はすべて非公表とし、胸襟を開いて語り合おうとした。
北朝鮮や人民元問題、中国軍のシビリアンコントロールの実情。複数の米側関係者によると、オバマ氏はこれらについて本音を探った。だが、胡氏は「党機関紙の『人民日報』とほぼ変わらない説明を繰り返すばかりだった」という。
米国のアジア太平洋戦略は日本の進路を左右してきた。海兵隊の沖縄からグアムへの移転の動きも目が離せない。財政難にあえぎながら、米国は再び、海洋進出のDNAを発揮していくのか。それによってアジアの地政学も変わる。
(編集委員 秋田浩之)