どう生かす 眠れる「資源」…日経新聞2月19日1面より
…前略。 文中黒字化は芥川。
トップを「配転」
焦点は持てる経営資源を「強み」に変え、とことん利益につなげていく仕組みづくりだ。昨年末、三菱ケミカルホールディングスの人事に業界が驚いた。傘下の三菱レイヨントップは三菱化学から、三菱樹脂のトップはレイヨンから。思い切った「配置転換」を断行したからだ。
…中略。
「横割り」の目で見れば不振の家電にもタネは多い。多額の赤字のなかでも収益が堅調な部門はある。デジカメなどに使うソニーの画像センサーもその一つ。独自の高画質技術は他分野への応用が期待できる。目下、うかがうのは医療への展開だ。
ソニーはそのため、オリンパスへの出資を検討する。最前線の顧客情報が事業開拓のカギになるからだ。顧客情報によって得意の技術が輝きを増す例は少なくない。今期、最高益を更新する東レ。
繊維再生のサクセスストーリーが有名になったが、直接取引を始めた「ユニクロ」からの顧客情報が製品開発の潜在力を引き出したことも見逃せない。除湿・保温などのニーズに応えた機能性素材が利益水準を底上げする。
勝ち戦に慣れた日本の技術企業が陥りがちだった供給者の論理。電子部品業界でも「情報を利益に変える仕組みが弱かった」(TDK)との声が出る。
消耗品で稼ぐ
自前の製品と技術の新しい組み合わせで活路も見える。旭硝子は昨年からO・1ミリの薄さで、曲げられるガラスなど新製品を続々と投入。保有技術を駆使した開発を加速する。
利益の8割以上を占める液晶用ガラス関連事業の利益率が急速に下がるなか、小粒な収益源の「数」で稼ぐ。円高で造船の競争力が低下した三菱重工業は船舶の省エネ技術や設計図面のライセンスを売り始めた。
建機大手はこれまでの膨大な販売数量を生かし交換用部品の収益を拡大している。ブリヂストンは表面だけ張り替えるトラック用再生タイヤを強化する。ひげそり用の替え刃、プリンターのトナーのように「販売後」にも継続して稼げる「消耗品ビジネス」は利益率が高く不況抵抗力がある。
逆風下、利益確保の有力手段だ。日本企業の手元資金は約60兆円と高水準で収益構造改革の原資はなお豊富だ。今回の決算が「デジタル敗戦」と総括されたとしても、巻き返す余力は十分ある。家電の巨額赤字は新しい戦いの号砲だ。貴重な経営資源を眠らせる余裕はない。