春秋…日経新聞2月20日1面より
宮沢賢治はハイカラな西洋野菜を好んだ。特にトマトがお気に入りで、花巻農学校時代も客があると畑のとれたてをふるまったという。かの「銀河鉄道の夜」にはトマト料理が登場するし、「黄いろのトマト」という童話も書いている。
▼そういう賢治でも、こんなには夢中にならなかっただろう。先日から全国で時ならぬトマトブームが到来し、店頭ではあの赤い実もトマトジュースも品薄が続いている。、トマトには脂肪の燃焼を促す成分が含まれているという研究が報じられ、すわメタボリック症候群に効果あり、と消費者が押しかけているのだ。
▼健康によい、とされる食品に人々が殺到する現象は「フードファディズム」と呼ばれ、過去に何度も繰り返されてきた。5年前の納豆のときにはテレビ局による効果でっち上げが問題になったものだ。こんどはちゃんとした研究に違いないが、かくも熱くなるとは世間にメタボおやじがあふれているせいだろうか。
▼最近は、特定のヨーグルトも品切れだ。こちらはインフルエンザ予防で人気というからブームを追うのも大変である。ならばひとつ、賢治の詩でも口ずさんでみようか。雨ニモマケズ/風ニモマケズ/雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ/丈夫ナカラダヲモチ/慾ハナク/決シテ填ラズ……。ああ、これも難しい。
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