河井寛次郎のこと。②
更に、奇しくも、とはこの事だろうか。
陶磁器には門外漢である人達にとっては、これぞ驚きの様な登り窯の入口。その下に、
河井寛次郎が足でろくろを回して作っていた作業場が在り、その側の居間が訪問者用のサロンになっているのだが、そこにあった沢山の展覧会関係のチラシの中に、世界のある機関が選定している、日本の庭園で、9年連続日本一の栄冠を獲得しているのは、足立美術館であると、書いてあるではないか。
2位に桂離宮を従えているのだから、実に大したものである。
と同時に、20数年前に、訪れた時の事を思いだしたのだった。
あの時、足立美術館内をメインとして、私を、バリバリに、実に見事に沢山の写真…一瞬一瞬の私を捉えた…私の真髄に迫った写真を撮ってくれた、鳥取有数の実業家にして私の親しい知人であったTさんが、私の為に指定して撮らせた鳥取在住の気鋭の写真家さんの事など、etc.社員旅行を兼ねて行った、当時の社員達、など。
一緒に訪問した弊社専務が、読んでいた案内書には、何時間居ても飽きない、と書いてあったそうだ。
河井寛次郎の自宅で在り、仕事場であった、この場所に在るものは、私が、直面した闇の中の魑魅魍魎が暗躍する世界…2割の悪党や、本質はプチ・ブルに過ぎない蜃気楼作家たち等が、作っている現代社会…拝金野郎に過ぎないものが大きな顔をしている社会だと云っても良い。
昨日、言った事ですら知らない顔をして平気でいる社会、そういったものから全く正反対に在る世界、一つの事を極め続けること、それを人生とした男の生きざまが、全ての空間に在る世界。
そして、その見事さ。
ありとあらゆる細部を疎かにしないで、日々を、毎秒、毎分、毎日を…私たちの人生を生きた男が、今も、此処には生きていて、この社会に欠けているものを、まじまじと、表現していたのである。
河井寛次郎こそ、その有様の全てに於いて、国宝として遇せられるべきだろう。