法華経が「法」を説くのに対し、華厳経は「仏」を説くのである。…鎌田茂雄。

文中黒字化は芥川。

われわれが華厳経をひもとくと、そこには限りなき光明に包まれ、荘厳をきわめた世界の様相が、いたるところに、くりかえし説かれている。

そのきわまりなき高遠雄渾の思想はわれわれをして亡羊の嘆をいだかしめる。

われわれの感覚からすれば、いったい何をいおうとして、このようにくりかえし、反復し、一見空想的にみえるような描写によって、仏や世界を荘厳するのか、理解に苦しむ。

華厳経のほんとうの名前は『大方広仏華厳経』(mahA-vaipulya-buddha-avataMsaka-sUtra)であるが、大方広とは仏につけた形容の言葉で「広大なるほとけ」という意味であり、法華経が「法」を説くのに対し、華厳経は「仏」を説くのである。

それは人間的な感覚や、人間の少さな悟性によって理解できる程度の矮小化された仏を説くのではなく、時間的にも空間的にも無限であるような仏を説く。

それはわれわれの分別智を越えた無分別智によってとらえられた仏でなければならぬ。

http://todaibussei.or.jp/ebacknumber/02_01_067.pdfから。

2012/6/10、世界遺産・高山寺にて。(C)芥川賢治。

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