今週、週刊朝日を買わなかった人たちのために、田中良紹氏の戦後の金字塔論文の続きを贈る
今週、週刊朝日を買わなかった人たちのために、田中良紹氏の戦後の金字塔・続きを贈る ロッキード事件以降もリクルート事件、東京佐川急便事件、ゼネコン汚職、金丸脱税事件、鈴木宗男事件と「政治とカネ」の話は続いた。今回の郵便不正事件では、検察が「思い込み」によって事件のストーリーを描き、それに合わせて被疑者を逮捕し、検察が作成した供述調書を被疑者に無理やり署名させる手法が明るみに出た。
江副浩正氏の『リクルート事件・江副浩正の真実』や佐藤栄佐久氏の『知事抹殺-つくられた福島県汚職事件』、産経新聞で長く司法記者を務めた宮本雅史氏の『歪んだ正義』、同じく産経新聞の石塚健司氏の『「特捜」崩壊』などを読むと、取り調べの異常さが生々しい。
みな「取り調べで否認しても仕方がない。裁判で本当のことを言おう」という気になる。裁判で供述を翻すと裁判は長期化する。裁判所は「事実上は無罪だが、判決は有罪」という訳の分からない判断を下してきたようにみえる。
実は無罪にすると起訴した検察官の立場が悪くなるので、それを避ける配慮で検察のメンツを立てるのだという。
今回の村木厚子元局長は無罪になったが、それでも判決文で裁判所は検察の捜査を批判していない。検察が控訴する危険を避けるためだという解説を読んだ。一体、検察の権力とはそれほど強いのか、逆に裁判所はそれほど検察に弱いのかという気になる。
宮本氏の『歪んだ正義』は、金丸信氏が絡んだ東京佐川急便事件の異様さから書き始めているが、「検察の捜査がおかしくなった原点はロッキード事件にある」という検察幹部の話を紹介している。
さらに検察の歪みの原点は「造船疑獄事件」(1954年)にまで遡ると書いてある。つまり、特捜部の捜査は最近おかしくなったのではない。誕生した時から歪んでいるのである。
リクルート事件は、消費税法案の審議と同時期に起きた。将来の少子高齢化に備えるための税制に実は社会党も公明党も賛成していた。ところが、予算委員会がリクルートースキャンダル追及一色となると、社会党も公明党も消費税の審議に応じない。
自民党は強行採決を余儀なくされた。議論を国民に見てもらえば恐らく理解を得られたはずの法案に「無理やり」「強行」のイメージが植え付けられた。消費税はいまだに嫌われる税制になっている。