最終章。

さらに、Aさんは当時の写真など、自身の記憶を裏付ける資料を海津検事のもとに送った。Aさんは言う。「海津さんから直接、『届きました。ありがとうございました』という電話をいただきました。だから、私の調書は廃棄されたか、訂正されたと思っていました」 

 

しかし、大阪地検はAさんから再聴取も、訂正もせず、村木氏の裁判で、証拠として採用するように求めていたのだ。実際、河野被告の裁判ではすでに証拠として採用されている。

 

Aさんはこう振り返る。

「取り調べの最中、私か『この年になって検察から尋問を受けるなんて、人生のどこかに間違いがあったんだと思います』と泣きだしてしまったことがありました。その時、海津さんは大きな声で『違う。そうじゃないですよ』と言ってくれた。事件の報道で、海津さんがテレビに映るたびに暗澹たる思いがします」

 

大阪地検の証拠改ざん事件では、実行犯とされる前田被告や、上司であった大坪、佐賀両被告だけが刑事責任を問われている。

 

しかし、前田被告から改ざんの事実を知らされた特捜部の国井弘樹検事(35)らは長い間、口をつぐんでいた。公判部などの検事たちも事実を知りながら、村木氏を有罪にするために裁判を続けていた。なぜ、彼らは犯人隠避罪や特別公務員職権乱用罪に問われないのか。

 

一連の事件は一部の検事の暴走で起こったのではない。検察という組織による犯罪であり、もはや「正義」など検察には存在していなかったことを証明している。今西憲之、本誌・小宮山明希、大貫聡子

 

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