先週号の週刊朝日、読書欄から。
前略
…「法律が本当に合理的なのは、都会ぐらいでしょう。地方にいけばいくほど、法律が正義とは言えない、人々の生活がある。例えば、八重山ではサトウキビの価格はあまりに安いため、大量のサトウキビを一家総出で工場まで運び続けない限り、生活できない。家族を支えるために山のようにサトウキビを積んだ軽トラックを運転して工場に向かう中学生は、たしかに法律違反をしているけれど、罰するほどの悪人なのか」
法や正義を超えたものを象徴するのは那覇港近くの涅槃院という寺。賭場が開かれ、王宮の女官と役人が禁断の逢瀬を重ね、犯罪者が匿われる一方、住職は貧しい人に金を貸し、地方から売られてきた子どもたちの後見人となる。
「琉球の寺は宗教施設というより、法律では救えない貧困問題に裏から助けを与える第二の公共としての役割を担ったんじゃないか。そのことも描きたかった」
この作品のもう一つの楽しみは、次々と登場する沖縄料理だ。国王しか食べられない極上のジーマミー (落花生)豆腐も、余命幾ばくもないオバアのためのフーチバージューシー(ヨモギ入り炊き込みご飯)も、言葉を連ねて実にうまそうに表現される。
なかでも豚の腸から作られた高級料理、中身汁の描写が興味深い。
「下処理に失敗して、少しでも排泄物が腸に残れば、ウンコの匂いの吸い物になる。でも完ぺきに下処理がなされた腸で作ると、ほんとうに花のような甘い香りがしてくるんですよ」
排泄物が花に転じる中身汁の話は、象徴的でもある…後略。
…土屋 敦氏の書評より…作者名は、今、手元にないのですが。