私が目指す芸術教えてくれた 「青い鳥」…渡辺 えり 劇作家・演出家・女優 朝日読書欄から。
聞き手 安里麻理子 黒字は芥川。
小学生の頃から学芸会といえば脚本を書き、「えりちゃんの劇は面白い!」つてほめられ、おだてられて今に至る私です。高1にしてすでに「私が進むべき道は舞台芸術だ!」つて思い込んでいたから、入部したての演劇部でずいぶん生意気な口もききました。
私、当時「アングラ」って呼ばれてた、新しくて熱い演劇がしたかったんです。なのに、先輩たちがやっていたのは、「うちは女子校だから男役を出しとけばウケる」みたいな恋愛もの。
山形育ちで、実際にはアングラは観てなかったんですけど、新聞の劇評を読んで脳内劇場は妄想でいっぱいでしたから、「そんな発想じゃダメだ!」つて、激論になって。「じゃあ、女子校でできる戯曲って何さ」と、東京のいろんな劇団に勢いで質問の手紙を出しまくったところ、ある劇団が教えてくれたのが、メーテルリンクの『青い鳥』
(新潮文庫など)でした。
読んでみたら、これが絶望的なお話でね。幼い兄妹の「おなかすいたね」で始まって、最後まで空腹がついて回るんです! ところがこの2人は、夢を見ておなかいっぱいにしていくんですね。私と同じだ!つて思いました。
人は貧しくても絵や芝居を見て幸せになれる、芸術は人生を満腹にする。そこに共感したし、初めて私に戯曲の構造を教えてくれたのもこの本でした。