日本への初訪問の準備を急ぐ投資家が…今朝の日経新聞15面から。
日本への初訪問の準備を急ぐ投資家が、カナダのモントリオールにいた。ローン・スタインバーグ・ウェルス・マネジメントのスタインバーグ社長だ。
豊富な現金資産に注目して、日本企業への投資を始めたのは1年前。今では自社の割安株ファンドの資産の4分の1を日本株が占めるようになった。
「ラフカディオーハーン 小泉八雲」が描いた日本人の深い精神性に引かれる」と言うスタインバーグ氏は、東日本大震災後に日本への投資を増やした。3月中旬にファンドの現金比率をいったん85%まで高めたが、足元は60%程度に縮小。余資の多くは、技術力に定評のある日本の中堅機械メーカーや、電子部品会社に向けられた。
大震災後の2週間で約1兆円の日本株を買い越した外国人投資家。その1人である日本びいきのスタインパーク氏も「日本市場の先行きには大きな不確実性が残っている」と語る。だからこそ自分の足で歩き、企業と人が戦後最大の国難を切り抜けられるかどうかを確かめたい、と。
東京電力福島第士原子力発電所の事故は、最悪の事態でも東京に大きな被害をもたらさない。そう見極めた外資系証券会社が先週まで、日本重視の姿勢を競って表明していた。そして今週からは、実際に株式や債券を売買する投資家の日本調査が相次ぐという。
大震災が経済や企業業績に与える影響もさることながら、「市場に異例の不確実性をもたらしてきた東電の原発問題」 (JPモルガン)も投資家の大きな関心事になるだろう。
市場に漂う「損害賠償額は数兆円」といった数字をそのまま信じるなら、3兆円弱の純資産を持つ東電の財務基盤は揺らぐ。東電の約60万人の個人株主には、配当や値上がり益を生活費の一部として当て込んでいた人も多い。東電株の下落はそうした投資家に逆資産効果をもたらす。
社会的責任投資(SRI)の助言会社インテグレックス(東京・渋谷)は3月15日、福島第1原発の事故に関する情報開示などに問題かあるとして、東電のガバナンスに対する評価点を20%下げた。これを受け、SRI投信が東電株の売却に動いている。
投資のお金は速く動かざるをえない。ならば存続可能な東電の姿について、市場発の日本の知恵をもっと出していい。
「一目均衡」 編集委員 小平龍四郎