仮設用建材 海外にSOS…今朝の朝日新聞6面から。
東日本大震災の被災地に建設する仮設住宅の資材が足りない。政府は6万戸の建設目標に向け、各国に資材供給を求める方針だ。
現場から。大震災と経済
「資材がない。それを運ぶ車のガソリンも不足気味だ。仮設住宅の建設が本格的に始まれは、人手も足りなくなるんじゃないか」。
仙台市のゼネコン経営者は頭を抱える。
宮城県では3月末、仮設住宅の建設が始まった。当面の目標は約3万戸。だが、仮設住宅に欠かせない断熱材や合板の工場が被災し、品薄になっているのだ。村井嘉浩知事も「(仮設住宅が必要なのは)宮城県のみではなく、沿岸部全域。日本中の業者に頼んでもすぐには難しいと思っていただきたい」と訴える。
住宅用断熱材「グラスウール」をつくるマグ・イソベール(東京都)は国内3工場のうち2工場が被災した。主力の明野工場(茨城県)は材料のガラスを溶かすかまが壊れ、生産再開は5月下旬になる。
旭ファイバーグラス(東京都)は、製品の8割を湘南工場(神奈川県)で生産する。だが、東京電力の計画停電が完全に実行されれば、生産量は半分に落ち込む見通しだという。グラスウールは、この2社で国内生産量の8割を占め、供給が追いつかない。
壁や天井、床に使う合板も不足気味だ。合板は岩手県や宮城県などでメーカー6社の6工場が被災した。
ここで国内生産の3割を占めているが、復旧のめどは立っていない。
ただ、国内での合板の生産能力は年間1億1500万枚。仮設住宅を6万戸つくるのに必要な220万枚を捻出できないわけではない。
大手住宅メーカーの担当者は「震災後、合板が品薄になるとみた各社が買い集めて一時的にパニックになった。
今は品薄で、実績のない業者が新たに合板を入手するのは難しい」。
国土交通省は先週、「5ヵ月間で6万戸」の仮設住宅を建てる目標を打ち出した。
地元の要望や被害の大きさを受けて、当初の「2ヵ月間で3万戸」をほぼ倍増した。
「何としても資材を確保し、不足があれば輸入措置をとって6万戸建設にめどをつけたい」。
大畠章宏国土交通相は5日の閣議後の記者会見で、6万戸の目標を達成するため、各国政府に協力を求め、資材の輸入を増やす考えを示した
グラスウールは各社が輸入を増やし、輸入量はこれまでの4倍の月間4千トンになる見込みだ。
これまでに被災地で着工したか着工が決まった仮設住宅は計約6300戸。国交省によると、来週末までに、さらに約1万戸分の壁や柱を工場から出荷できる見通しがたったという。
建設用地さえ確保できれば。「2ヵ月間で3万戸」は達成できるという。
だが、「5ヵ月間で6万戸」には課題が残る。だが、「5ヵ月間で6万戸」には課題が残る。
建設目標を増やしたため、資材の値上がりを期待した買い占めや売り惜しみが生じるおそれがあるためだ。
「仮設住宅に使う浄化槽やサッシも不足しそうだ」と話す住宅メーカー担当者もいる。
(歌野清一郎、内藤尚志)