「アメリカ政治を支えるもの」久保 文明編…朝日新聞4月3日読書欄から。
副題にある「政治的インフラストラクチャー」とは、やや耳慣れない言葉であろう。編者はこの概念を政治の下部構造と呼び、具体的にはシンクタンクや財団、政策研究所、メディア、メディア監視団体、雑誌、大学、政治家養成団体などを挙げている。
政治家や政党など政治の上部構造に対して、中長期的かつ一般的な政治的影響力の増進を目的とした政治勢力や政策専門家集団のことである。
もとより、大統領と議会の関係や民主党対共和党という二大政党制、連邦政府と州との関係なども、アメリカ政治を理解する上で不可欠であり、これまで様々に議論され分析されてきた。しかし、アメリカという重層的で多様な社会で展開される政治現象を理解するには、さらに政治の下部構造にまで分け入る必要がある。それが本書の問題意識であろう。
日本政治を分析する際には、われわれは当然、様々な圧力団体や業界団体、メディアをも視野に含めている。その意味で、本書は日本のアメリカ政治研究が日本政治研究の水準に接近しつつあることを示している。日本の政治を念頭に、本書を比較政治的な観点から読むこともできよう。
アメリカ政治では日本政治においてよりも、財団やシンクタンク、軍の役割がはるかに大きい。宗教勢力や法曹が大きな影響力を有している点や、政党が政治家養成機関を擁し、大学が政治の舞台となる点も、アメリカ政治の特徴であろう。
さらに、メディア監視団体や政治資金監視団体、コミュニティー・オーガニゼーションが「政治的インフラストラクチャー」として機能するのは、アメリカの市民社会のダイナミズムの故である。
章によって少し羅列的なところもあるが、本書は全体として、アメリカの「政治的インフラストラクチャー」について最新の情報と分析を提供する、いわば「知的インフラストラクチャー」である。われわれが知的射程をのばして本書を活用すれば、混迷する日本政治をより深く理解し、改革への糸口を見出せるかもしれない。
評者:同志社大学教授 村田晃嗣 黒字化は芥川。
*記者クラブで仕入れた情報=お上が流す情報を垂れ流すだけの論説員たちや、キャスターたちが、政治を作ってはいけないのだ、と書いてあるのだと、芥川は指摘する。
実に象徴的な事だが、この2年間、彼らが血祭りに上げる事に、狂奔し続けた政治家は、自ら政治家養成機関を擁し続けていた。…彼は、この様なアメリカ政治の本質についても、誰よりも精通していた訳だ。