活字が読める日本国民全員が一字一句読むべし特集。③

どういうことか。

国税庁に税務申告している企業、医療法人などの総数は全国約262万社(10年度末)にのぼるが、このうち厚生年金に加入している事業所数は約175万社(同)。その差、87万社は年金保険料を納めておらず、社員は無年金か、自営業者と同じ国民年金などに加入させられている。これは違法行為である。

歳入庁をつくれば、税金だけ納めて保険料は払わないということはできなくなるから、保険料徴収漏れを一気に解決できる。

民主党議員の勉強会で歳入庁の重要性を説いてきた元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が指摘する。

「175万社の厚生年金の保険料収入は年間約32兆円。未加入の87万社の徴収漏れはざっと10兆円と推計される。野田政権が社会保障財源のためといっている増税がなくても、歳入庁をつくって取るべき保険料を取れば10兆円の財源ができる。

さらに国民総背番号制度を導入すれば税の捕捉率が高まり、5兆円ほど税収増になる可能性がある。それに加えて、日本の消費税制にはインボイス(仕入れ時に消費税額を記入する書類)がないから捕捉漏れが起きている。インボイスで税務署が捕捉漏れを防げば、消費税5%のままでも約3兆円の増収になる。合わせて18兆円だから、増税の必要は全くありません」

それなのに歳入庁設置が進まないのはなぜか。

財務省が嫌がっているからである。強大な税務調査権を持つ国税庁の存在は、財務省を頂点とする官僚支配の「裏権力」の源泉になってきた。

国税庁の幹部は財務省キャリアで占められ、政治家でも民間人でも、財務省の政策に反対する者を税務調査で桐喝することは、日本の裏面史だった。

最近も、国税当局が大新聞に次々に税務調査をかけ、その直後からメディア全体の論調が増税賛成へと急傾斜したことを本誌は報じてきた。

国税庁解体は、財務省の“秘密警察”を武装解除する意味があるのだ。だから霞が関改革につながる。

実は、野田政権の税・社会保障一体改革素案にも表向き歳入庁創設の方針は盛り込まれている。だが、財務省が絶対反対の立場をとっているため具体的な検討は全く進んでいない。

「財務省は、国税庁を旧社保庁(日本年金機構)と統合すると人事コントロールができなくなる。税務調査権という伝家の宝刀が使いにくくなるから絶対に阻止したい。

英国では99年に国税庁と社会保険徴収庁を統合して歳入庁を創設した。検討開始から実現までわずか2年、間接部門もスリム化できた。

当時米国留学中だった私がこの英国の歳入庁創設をレポートして本省に報告したら、暗に、“二度と持ち出すな”と口止めされたほどです」(高橋氏)

政治主導を掲げる小沢氏が歳入庁の創設にこだわる理由はここにある。そして、財務省に支配された野田政権が歳入庁構想を棚上げしている理由も、ここにある。

…以下続く。

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