非核三原則の3項「(米国に)持ち込ませず」を「(中国に)撃ち込ませず」に変更する必要がある…非核三原則は「撃ち込ませず」に改めよ ― 覚醒する日本と現実的核抑止戦略

非核三原則は「撃ち込ませず」に改めよ ― 覚醒する日本と現実的核抑止戦略

産経新聞「正論」に掲載された兼原信克(澤麗澤大学特任教授・笹川平和財団常務理事)の論文を紹介する。戦後80年、日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えている。中国の急速な核軍拡、台湾有事の可能性、北朝鮮の核武装という現実の中で、日本は米国任せの核抑止から脱却し、現実的な核戦略を構築する必要がある。非核三原則の「持ち込ませず」を「撃ち込ませず」へと改めるべきだと提言する論考である

以下は本日の産経新聞「正論」に、非核三原則は「撃ち込ませず」と題して掲載された澤麗澤大学特任教授・笹川平和財団常務理事:兼原信克の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

覚醒しつつある日本
日本の国家生存本能は、戦後永い閧、眠っていた。
高市早苗首相の総選挙での劇的な勝利は、新時代の幕開けを予感させる。
日本が覚醒しつつある。 
振り返れば日本の戦後史は、日米同盟を選んだ自民党と、中ソ朝の共産圏に傾斜した革新勢力の激突の歴史であった。
革新勢力は米国の圧倒的な軍事力による庇護の下にありながら、共産圏内の自由弾圧に目を瞑り「非武装中立(米同盟廃棄・自衛隊解体)などと東側陣営を代弁する論陣を張り続けた。
内なる東西分裂を抱え込んだ日本の国家理性は麻痺した。 
戦後ももう80年である。
世界政治の変容を無視した中道改革連合が大敗を喫したのには明確な理由がある。
今の若い人々は中国の大軍拡、台湾有事の影、北朝鮮の核武装、そしてウクライナ戦争の悲惨な現実に毎日触れている。
また戦後日本は、自由と平和を一貫して大事にしてきた。
中道改革連合が「高市政権が軍国主義で、独裁で、戦争に突き進む」といくら叫んでも誰も理解できない。 
左派勢力の自治労、日教組といった官公労を公明党の力を借り中道路線に引き込もうとした野田佳彦元首相の蛮勇は空振りに終わった。
時の流れの方が遥かに速かったからだ。
時代が変わった。
世代が代わった。
この変化は不可逆である。
長かった戦後という名の夜がようやく明けようとしている。 
日本にとって焦眉の急は、現実的な核抑止政策の立案である。
中国、北朝鮮の核が撃ち込まれれば一瞬にして数十万、数百万の日本人が死ぬ。
にもかかわらず戦後、日本の歴代首相は核と言えば米国に任せきりの無責任体制だった。
核の実戦使用は米国大統領ただ一人が権限を持つ。
日本の首相の方から切り出さなければ米国が核の実戦面を取り上げることはない。
故安倍晋三元首相が「核共有の議論を始めよう」と勇気をもって発言されたが、その直後に卑劣な暗殺者の凶弾に斃(たお)れた。
その後、既に約4年が無為に過ぎている。 

現実的な核抑止戦略急げ 

今、日本が最初にやるべきことは現実的な核抑止戦略の策定である。
第一に戦略レベルの問題がある。
米国はNATOや日韓両国に核の傘を提供し米本土同様に守ると約束している。
米国は常時1500発以上の核弾頭を配備して口シアの核施設を狙っている。
NATOにロシアから戦略核が撃ち込まれれば、米国は直ちに露の核施設をすべて破壊することとなっている。
もし米国の核施設が反撃前に露の先制攻撃で破壊し尽くされれば、戦略原潜のトライデント・ミサイルが第二撃の報復を確実にする。NATOはこのような確約の上に成り立っている核同盟であり、演習が繰り返されている。
日米同盟には、NATOのような核の実戦面での合意や作戦がない。
現在、中国が猛烈な勢いで核軍拡に乗り出しており、4年後には1000発の弾頭を抱えると予測されている(国防総省)。
米国は、今後中露という二大核兵器国と対峙することになる。
もし日本に対する中国の戦略核攻撃があったら、米国は直ちに中国の核施設をすべて核で排除して、それ以上の核攻撃を防いでくれるのか。 
あるいは、中国から日本の大都市が核攻撃されたら、同様に核の報復をする覚悟があるのか。
日本政府は、米国から詳細な説明を受け、国民にそのコミットメントの確実さを説明する義務がある。 
第二に、戦術レベルの問題がある。
NATOの対露戦は直ちに第三次世界大戦、戦略核の大量発射に進む恐れがあり、常に紛争沈静化への政治的な力が働く。
しかし台湾有事は米中日比豪を巻き込むとはいえローカルな戦争であり、逆に紛争がエスカレートしやすい。
日米同盟側は中国に対し常に優位に立てるように、強力な柔軟対応戦略を策定する必要がある。 

「持ち込ませず」は変更を 
 
日本が反撃力として12式中距離巡航ミサイルを大量導入すれば、史上初めて、日米間で中国への反撃のための攻勢作戦の調整が始まる。
日米側のカードの内、欠けているジョーカーが戦術核である。
将来、中国が日本の自衛隊基地を低出力戦術核で吹き飛ばしたとき、日本は反撃用の戦術核を持たない。
そこで米国が停戦に動けば、日本はやられ損である。
中国に対して、同等の報復を示唆できなければ、中国に戦術核使用を思いとどまらせることはできない。 
日本が最初に直面するのは2030年代半ばに再浮上するであろう中距離核ミサイル搭載の米攻撃型原潜の寄港問題である。
米国は核弾頭の搭載不搭載は明らかにしない。
それでも寄港を受け入れることが必要である。
潜水艦は水中での捕捉が難しく残存性が高い。
そもそも水と食料を積みに寄港するだけで、核持ち込みと騒ぐ方がおかしかったのである。
非核三原則の3項「(米国に)持ち込ませず」を「(中国に)撃ち込ませず」に変更する必要がある。
核の論争は、イデオロギー対決の玩具ではない。
大勢の国民の生と死がかかった問題なのである。
高市政権の英断を期待したい。     
(かねはら のぶかつ)

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