尖閣侵入も「国恥」から生まれる――櫻井よしこが説く中国共産党の力の信奉
櫻井よしこ氏の論文をもとに、中国共産党の強硬姿勢の根底にある「勿忘国恥」、選民意識、愛国主義、力の信奉を読み解く。武漢ウイルス、豪州への報復、南シナ海、台湾海峡、尖閣諸島への侵入を通じて、中国の世界戦略と日本の生き残る道を考察する。
2020-06-19
尖閣諸島に「海警」所属の事実上の軍艦4隻が常に侵入しているのも、彼らが力を信奉するためだ。
以下は前章の続きである。
選ばれた民は誇り高い。
習氏が2017年10月18日、中国共産党第19回全国人民代表大会での演説で語ったように、中国は経済力をつけ、軍事力を強化し、世界の諸民族の中にそびえ立つべき存在だと、彼らは信じている。
中国は世界の諸民族に価値観を教え、導くのであるから、尊敬され、称賛されるべき存在だと疑わない。
従って、わずかな誹謗や批判も許容できないのである。
一例が中国政府の武漢ウイルスに関する当初の拙劣な対処や経済への影響を論じた米国の政治学者、ウォルター・ミード氏の「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」紙の記事に「中国は真にアジアの病人だ」という見出しがついたことへの尋常ならざる怒りであろう。
中国政府は感情のコントロールができないかのように、2月19日、ミード氏の記事とは何の関係もない北京駐在の同紙特派員3名の追放に踏み切った。
豪州国籍の男性に死刑
1100万人の住む都市、武漢を一夜にして封鎖し、一切の実情を報道させず、それでも一応武漢ウイルスを他国に先がけて抑制したと誇る。
彼らはその「実績」を掲げ、国際社会に中国の規範を示すのである。
彼らはいまが勢力拡大の好機と見て、持てるすべての手段を駆使する。
4月23日に豪州首相のモリソン氏が武漢ウイルスの発生源に関して国際社会は独立した調査を行うべきだと、私たちの側の論理では当然の主張を展開すると、中国は、5月12日、豪州産の農産物輸入規制で報復した。
6月5日、豪州で中国人への差別的言動が増加中として、国民に豪州への渡航自粛を促した。
10日には広州市中級人民法院が薬物密輸の罪で起訴された豪州国籍の男性に死刑判決を下した。
経済力だけでなく司法の力も彼らは自在に活用する。
中国共産党は三権の上に君臨する超法規的存在であるため、何でもできる。
*立憲民主党などの野党や朝日新聞等やNHK等のテレビ局は、法務省管轄の検察官の定年を延長する事が三権分立の侵害だ等と、やくざ以下の難癖をつけて政権に対する攻撃をしている暇に、中国共産党の異常さを追求すべきであろう*
無論、軍事力の効用も最大限活用中であることは、南シナ海や台湾海峡における中国軍の海と空での行動を見れば明らかだ。
尖閣諸島に「海警」所属の事実上の軍艦4隻が常に侵入しているのも、彼らが力を信奉するためだ。
国際社会は中国を突き動かす力が「国恥」という言葉から生まれていることに思いを致せというのが汪氏の警告である。
中国の子供たちは幼い頃から「勿忘国恥」(国恥を忘れることなかれ)という言葉を教え込まれる。
列強諸国、とりわけ日本にどんなに酷い目に遭わされたか、民族の恨みと憤りを教え込むのである。
国恥への歯ぎしりが、中華民族は復興を遂げなければならないとの切望を生み出す力につながる。
文革で毛沢東主義の過ちが判明し、東西の冷戦で共産主義のソ連が崩壊し、そこに生じたイデオロギーの空白を、中国共産党は埋めなければならなかった。
共産主義社会の実現に替わる思想を見つけなければ共産党の存在意義は消滅する。
空白を埋める新たな思想が、愛国主義、中華民族の偉大なる復興だった。
愛国主義につながる「勿忘国恥」こそ中国共産党の生き残りを支えた言葉なのだ。
中国の強硬姿勢を抑制する力を多国間協力を通して強めることが日本の生き残る道であろう。