日本独自の「クラスター潰し」が世界をリードした――日本の医師の数理能力が国民を救った
掛谷英紀氏は、「クラスター潰し」と「3密」の回避を、日本の独創性が強く表れた新型コロナウイルス対策と評価する。
指数関数や微分方程式を理解する日本の医師と専門家会議の高い数理能力が適切な感染症対策を導いた一方、米国や日本の一部知識人に見られた数理リテラシーの欠如を厳しく指摘する。
2020-07-02
私が集めた情報から総合的に判断すると、「クラスター、感染者集団潰し」は、日本のオリジナリティー、独創性が強く表れている対策だったと考えられる。
以下は前章の続きである。
世界をリードした専門家会議
私が集めた情報から総合的に判断すると、「クラスター、感染者集団潰し」は、日本のオリジナリティー、独創性が強く表れている対策だったと考えられる。
3密、すなわち密集、密接、密閉を避けるということは、日本では初期から盛んに推奨されていたが、米国では5月になって、ようやく同じようなことを言い出した。
日本の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、世界をリードする卓見を有していたと言える。
感染症対策を議論する上で必須の知識である指数関数や微分方程式を理解している点も、日本の医師の強みである。
ご存じの通り、日本において医学部は、大学入試における最難関である。
私はこれまで、最も学力の高い人たちを医学部にとられることに、釈然としないものがあった。
そもそも、入試で出題される理数系の問題を解く能力は、医学部よりも理工系の学部に入ってから役立つものであって、医師には過剰な能力を求めていると考えていたからだ。
しかし、今回の新型コロナウイルス問題は、その考えを改めるきっかけになった。
日本の医師が適切な対策をとることができたのは、彼らの数理能力が高いからである。
我々は、彼らの頭脳に救われたのである。
一方、米国の医師の会見動画などを見ていると、標本の偏りに対する考慮に欠けるなど、統計の基礎を理解していないと思われるケースが、しばしば見られる。
そもそも、米国の場合、知識人一般の科学や数学に関するリテラシーは低い。
例えば、米国の保守論客デニス・プレーガー(Dennis Prager)やベン・シャピーロ(Ben Shapiro)は、米国における新型コロナウイルスの死者数がまだ少なかった時、交通事故やインフルエンザの死者数を引き合いに出し、過剰な自粛措置をとることに反対していた。
しかし、結果として、米国での新型コロナウイルスによる死者数は10万人を超えている。
これは、米国の交通事故やインフルエンザによる年間死者数を大きく上回る。
指数関数的な増加が見込まれる場合、それまでの累積死者数だけをもとに判断してはいけない。
米国の知識人には、そのレベルの数理リテラシーすらなかったのである。
ただし、この点については、日本の文系知識人も決して褒められたものではない。
特に、新型コロナウイルスに関する情報発信でひどかったのが、東大文系出身の評論家たちである。
彼らの数学音痴は、目を覆いたくなるものばかりであった。
例えば、経済評論家の池田信夫氏は、自身のTwitterにこう書いている。
〈日米の差は医療や生活習慣のような「変数」の問題ではない。
SIRモデルで変数を多少いじっても、被害はほとんど変わらない。
これは微分方程式の「係数」の違いで、原因はおそらく自然免疫。
それを分析しないと、根本的な解決策は見つからない〉
これだけで、彼が微分方程式を全く理解していないことがよく分かる。
微分方程式は、初期値と係数を決めれば、変数の動きが自動的に定まるからである。
結局、文系エリートの多くは、理解していないことを、あたかも理解しているかのように話すのが得意な人種に過ぎないということだろう。
この稿続く。