習近平の欧州への秋波は「片思い」に終わる――戦狼外交で世界的孤立を深める中国
石平氏は、習近平国家主席が中国と欧州を「2大勢力、2大市場、2大文明」と位置付け、連携して世界を主導しようとする構想を分析する。
しかし、米国、インド、オーストラリア、日本などとの対立を深め、孤立を招いた中国の秋波にEU首脳は応じず、自由と民主主義の価値観を共有する欧州は、むしろ中国から離れていく可能性が高いと論じる。
2020-07-03
一部の国には、確かに経済的利益のために中国との交流を深めたい思惑もあろうが、欧州全体が、習主席の期待する「一大勢力」として中国と連携することは、まずない。
以下は、昨日の産経新聞に、「欧州へ秋波…習主席の片思い」と題して掲載された石平氏の連載コラムからである。
先月22日、中国の習近平国家主席は、欧州連合、EUのミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長とのテレビ会談に臨んだ。
そこで習主席は、中国と欧州との関係性についての新しいコンセプトを提示したのである。
彼曰く、「中国と欧州は、世界の安定と平和を維持する2大勢力となるべきであり、世界の発展と繁栄を牽引する2大市場となるべきであり、多国間主義を堅持し、世界の安定化を図るための2大文明であるべきだ」という。
習主席は、それまでにも中国と欧州との「全面的なパートナーシップの構築」を盛んに唱えてきた。
しかし、上述の会談において、彼は初めて中国と欧州を「2大勢力、2大市場、2大文明」と位置付けた上で、両者が連携して、今後の国際政治と世界経済をリードしていくべきだとの考えを示した。
欧州首脳との会談だから、習主席は超大国アメリカや日本のことには一切触れていない。
だが、「2大」という言葉を盛んに持ち出し、中国と欧州こそが「世界の2大勢力、2大市場、2大文明」だと強調してやまないその語りぶりからすれば、習主席の眼中には、米国や日本のことはもはやない。
中国と欧州さえ手を握っていれば、世界は自ずと安定し、繁栄するだろうという意気込みを強く感じさせた。
習主席が欧州首脳と世界に向かって、このようなメッセージを送った背景には、深まる一方の米中対立と、5月21日付掲載の本欄が取り上げた「脱中国化」の世界的な動きがあるのであろう。
今の米中関係は、南シナ海問題、貿易問題、香港問題、ウイグル人の人権問題などをめぐって、対立が日増しに激しくなってきている。
そして、トランプ米大統領が「中国との完全なデカップリング、切り離し」の可能性を公言するほど、政治と経済の両方で中国離れが進んでいる。
その一方、最近の中国は、アジアの大国インドと準軍事的衝突を起こしたり、オーストラリアを恫喝したりして、緊張を高めている。
隣国の日本に対しても、いわば「尖閣問題」をめぐる対立を深めている最中である。
こうした「四面出撃」の戦狼外交を展開した結果、中国は世界の主要国の多くを敵に回してしまい、世界各国の脱中国化の動きを、むしろ加速させている。
気が付けば、孤立を深めているのは、むしろ中国自身である。
このような窮状だからこそ、習主席は今になって欧州に最高級の秋波を送り、欧州と連携して米国に対抗し、世界を「制覇」するような「戦略」を展開しようとしているのだ。
しかし、もちろんそれは、単なる習主席の片思いに終わってしまう可能性が大である。
欧州の一部の国には、確かに経済的利益のために中国との交流を深めたい思惑もあろう。
しかし、欧州全体が、習主席の期待する「一大勢力」として中国と連携することは、まずない。
実際、中国側の発表から見ても、習主席との会談に臨んだEUのミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長は、習主席の提唱した「2大勢力、2大市場、2大文明」というキーワードに、一切反応を示していない。
フォンデアライエン委員長に至っては、習主席との会談後の記者会見で、中国からのサイバー攻撃を批判し、中国が進める「香港国家安全維持法」に対する懸念を表明した。
習主席の皮算用とは裏腹に、自由と民主主義という普遍的な価値観に立ち返れば、欧州は将来的には、むしろ中国から離れていくのではないかと思われる。