米中対決と中国の「見えない侵略」――古田博司・藤井厳喜対談が明らかにしたウォール街、知的財産、千人計画、5G覇権

古田博司と藤井厳喜は、月刊誌『WiLL』の対談で、米中対決を現代世界の中心軸として論じた。
中国国有企業の不透明な米国上場を黙認してきたウォール街、中国に関係する知的財産窃取事件、海外研究者を取り込む「千人計画」、ファーウェイと5G、「中国製造2025」を取り上げ、中国が経済、金融、科学技術、人材を通じて進めてきた「見えない侵略」の構造を明らかにする。


2020-07-22
本稿は、2020年7月22日に発信した章である。
前日に発売された月刊誌『WiLL』に、「日本のメディアが伝えない、米大統領選はトランプ圧勝」と題して掲載された、筑波大学名誉教授・古田博司と国際政治学者・藤井厳喜の対談特集を紹介した。
対談特集の表題には、当時行われていた2020年米国大統領選挙についての予測が掲げられていた。
本稿に収録した部分の中心は、選挙予測そのものではなく、米中対決の本質と、中国が米国の金融市場、企業、大学、研究機関、知的財産、通信技術へ浸透してきた構造にある。
藤井厳喜は、2020年5月29日にホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ大統領の演説を、米国による事実上の対中宣戦布告と位置づけた。
また、中国国有企業が十分な会計情報を公開しないまま米国市場で資金を調達してきた背景には、中国企業から利益を得ようとするウォール街の金融資本の力があったと指摘した。
さらに、FBIが取り扱っていた多数の対諜報事件、中国政府の海外人材獲得事業である「千人計画」、ハーバード大学教授チャールズ・リーバーをめぐる事件を取り上げ、中国が資金を用いて一流研究者と先端技術を取り込んできた実態を論じた。
原文に記されたチャールズ・リーバーへの報酬額は、当時の米司法省発表に示された月額最大5万ドル、生活費約15万8千ドル、研究施設設置費150万ドル超という内容に基づいている。
対談はさらに、ファーウェイと5G、「中国製造2025」をめぐる技術覇権競争へ進み、習近平が中国の国家目標を明示したことによって、米国が中国の長期戦略に危機感を持つに至ったと論じている。
以下に、2020年7月22日に発信した日本語原文を、一字一句変更せずに掲載する。
日本語原文
2020-07-22
ところが、ここ20年ほど、チャイナ企業で儲けたいウォールストリートの金融資本の力に負け、米国は50社以上のチャイナ企業の上場を黙認してきた
以下は、日本のメディアが伝えない、米大統領選はトランプ圧勝、と題して昨日発売された月刊誌WiLLに掲載された古田博司筑波大学名誉教授と藤井厳喜国際政治学者の対談特集である。
古田博司は世界有数の韓国、中国通であり、藤井厳喜は特に米国情勢について世界有数の学者である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
日本国民は今すぐに最寄りの書店に購読に向かわなければならない。
何故なら、彼らが語っている事が真実であるからである。
朝日新聞等を購読しNHK等の報道番組やトークショーを視聴しているだけでは全く分からない真実が満載されている月刊誌だからである。
リベラルな米国人は「バイデンしか候補がいないのか」と嘆いている……
前近代国家の見えない侵略
古田 漢コロナによって世界がひっくり返ってしまいましたね。そんな中、中西輝政先生が産経に「歴史はまさに21世紀最大の危機を迎えようとしている」といったテーマで寄稿されていた(6月28日付)。
藤井 大きな歴史の転換点にいることは間違いありません。そのキーワードは「米中対決」。武漢コロナ問題やミネアポリス暴動問題も、その本質は米中対決にあります。この基軸が見えなければ、現代社会に現れてくるさまざまな問題を本質的に理解することは難しいでしょう。『米中最終決戦』(徳間書店)では、そのあたりのことを解明しています。
古田 米国は本気で中国を締め上げようとしています。   
藤井 5月29日、ホワイトハウスのローズガーデンにおけるトランプ演説が、大統領自身の声明による対中宣戦布告であることは間違いありません。
古田 中国による米国経済の搾取の実態や香港の自治の保障を反故にしたことなどをあげていました。
藤井 その上でトランプは「米国が求めるものは、開かれた、そして建設的なチャイナとの関係であるが、こういった関係を実現するためには、我々はわが国の国益を積極果敢に防衛しなければならない」と述べています。実際にトランプ政権は、超党派でチャイナ締めつけ政策を進めている。たとえば、議会は上場している外国企業の監視を強める法案を可決しましたが、まさにチャイナの企業を狙い撃ちしたものです。そもそもチャイナの国有企業は、会計報告(貸借対照表:バランスシート。以下、BS)を公開しないことが、チャイナ国内の法律で決められています。
古田 社会主義経済をやってしまった国には、複式簿記なんて絶対にできません。
藤井 しかも、大企業内には、共産党委員会が設置され、党中央に報告する義務がある。米国で上場するには、極めて高い透明性のあるBSの公開が必須でした。ところが、ここ20年ほど、チャイナ企業で儲けたいウォールストリートの金融資本の力に負け、米国は50社以上のチャイナ企業の上場を黙認してきたのです。今回の法案によって、BSを詳細にチェックする義務が発生しました。これでチャイナは米国内で資金調達ができなくなります。チャイナ企業の多くは上場廃止になるでしょう。私が最も注目している企業はアリババです。上場廃止となれば、ソフトバンクの孫正義さんもタダでは済みません。孫さんの最大の資産はアリババの株ですから。
古田 さらに知的財産権の問題でも、米国は追及の度合いを強めていくでしょう。
藤井 7月7日にFBIのレイ長官がハドソン研究所で講演し、知的窃盗の具体例をあげて米国民に警告を発しました。現在FBIが扱っている5000件のスパイ事件のうち、その50%がチャイナ絡みだそうです。
チャイナは人材ですら、自国に取り込んでいます。2008年から「千人計画」を始めていました。具体的に説明すると、2050年をめどに、科学と技術の分野においてチャイナが世界1になることを目標に掲げ、外国のトップレベルの研究者をチャイナに招聘するプログラムのことです。
古田 カネにものをいわせた体のいい奴隷ではありませんか。藤井 そうです。頭脳狩りですし、知的奴隷狩り、あるいは一流研究者の拉致問題と言っても過言ではありません。特に米国の研究者が狙われていて、給与や研究費、そして研究施設や研究環境の面でチャイナは破格の条件を出していますから、本人たちは人材拉致であることに気づかないのです。実際に逮捕者も出ています。一例をあげると、ハーバード大学の化学・化学生物学部長で、ナノテクノロジーの世界的権威のチャールズ・リーバー教授は、米国防総省から研究費を受け取っていたのにもかかわらず、同時に千人計画にも参加、そのことを連邦政府に報告していませんでした。これは違法行為です。
古田 お金ももらっていたんですか。
藤井 ええ、毎月5万ドル(約540万円)の研究奨励金と年間158,000ドルの生活費、加えて彼のハーバードの研究室と同じ研究室をチャイナにつくった謝礼として150万ドルを受け取っていました。結局、リーバー教授は逮捕されましたけど、
氷山の一角でしょう。すでに7000人の研究者を招聘していると、米国の調査報告書によって公表されていますから。少なくとも日本人研究者3人が「千人計画」に参加していることもわかっています。
古田 大学教授はマルクス信者で親中派が多いから、すぐに中国に協力してしまいますよ。これから、どんどん増えていきそうです。
藤井 確かにチャイナのやり方は狡猾極まりないですが、習近平は尻尾を出しやすいので、ありかたい。鄧小平のような知恵者だったら、「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略で米国は完全にチヤイナに呑み込まれていたでしょう。ところが、習近平は実に素直にすべての種明かしをしてくれる(笑)。
古田 5Gだって放っておいたらファーウェイにすべて支配されていましたよ。
藤井 全くです。ところが、習近平は「チャイナ製造2025」を掲げて、2025年までにさまざまなハイテク分野でチャイナがトップに立つと表明しました。米国はそれを見て危機感を覚え、ファーウェイ潰しに勤いたのです。習近平は本当にバカです(笑)。
この稿続く。

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