雨上がりの薔薇――生きて、再びこの美しさに出会った|2012.7.12 京都府立植物園 × 庄司紗矢香/メンデルスゾーン《ヴァイオリン協奏曲》
2012年7月12日、京都府立植物園。
雨上がりの薔薇である。
前年の2011年12月16日、私は8か月間に及ぶ長期入院を終え、完治して退院した。
そして翌2012年、私は1年365日のうち、実に300日を京都府立植物園の花鳥風月を撮影して過ごした。
花を撮った。
鳥を撮った。
光を撮った。
雨を撮った。
風を撮った。
春から夏へ、夏から秋へ。
そして冬へ。
季節が移ろってゆく、その一瞬一瞬を撮り続けた。
だから、このような写真も撮れたのである。
雨が上がったばかりの薔薇。
花弁にはまだ雫が残り、葉の上には、たった今まで降っていた雨の記憶が宿っている。
晴れた日の薔薇とは違う。
雨上がりの薔薇には、静けさがある。
儚さがある。
しかし同時に、驚くほど鮮烈な生命の輝きがある。
長い入院生活を終えたばかりの私にとって、あの年の京都府立植物園は、単なる撮影場所ではなかった。
毎日そこへ行く。
昨日とは違う光を見る。
昨日には咲いていなかった一輪の花に出会う。
鳥の声を聴く。
風を感じる。
雨上がりの葉に宿る一粒の雫を見る。
それは、生きているということを、毎日のように確かめる時間でもあった。
今回は、この2012年7月12日の雨上がりの薔薇を、**庄司紗矢香が奏でるメンデルスゾーン《ヴァイオリン協奏曲》**とともに映像にした。
庄司紗矢香のヴァイオリン。
その凛とした響きと、研ぎ澄まされた一音一音。
メンデルスゾーンの旋律は、最初の一音から心の奥深くへ入ってくる。
憂いを湛えながら、決してその場所に留まらない。
音楽は流れ、やがて光へ向かう。
雨上がりの薔薇もまた、そうだった。
雨に打たれながら、それでも花はそこに咲いていた。
そして雨が止んだ瞬間、雫をまとって、晴天の日には決して見ることのできない美しさを見せてくれた。
人生にも、突然、雨が降る。
いつ止むのか分からないほど、長く降り続く雨もある。
けれども、雨はいつか上がる。
そして、雨が降った後にしか見ることのできない光景がある。
生きていたから、この薔薇に出会えた。
生きていたから、この一瞬を写真に残すことができた。
2012年7月12日。
京都府立植物園。
雨上がりの薔薇。
そして、庄司紗矢香が奏でるメンデルスゾーン。
これは、ただ薔薇の美しさを写した映像ではない。
再び、この世界の美しさを見ることができた。
そのことを記録した、私自身の一篇なのである。