河野談話はいかにして生まれ、何をもたらしたのか――櫻井よしこが初めて明らかにした慰安婦問題の経緯
1993年の河野談話がどのような経緯で作成され、その後の日韓関係と日本に対する国際的評価にどのような影響を与えたのか。
『月刊正論』2014年10月号の櫻井よしこ、門田隆将、阿比留瑠比による緊急座談会から、石原信雄元官房副長官への取材、慰安婦16人への聞き取り調査、朝日新聞の慰安婦報道をめぐる議論を再掲する。
2020-08-17
本稿は、『月刊正論』2014年10月号に掲載された緊急座談会「慰安婦、吉田調書…消えぬ反日報道の大罪」から、慰安婦問題、河野談話、朝日新聞報道をめぐる部分を取り上げたものである。
阿比留瑠比は、河野談話がどのような過程を経て発表され、どのような影響を及ぼしたのかを最初に詳細に明らかにしたのが櫻井よしこだったと述べている。
その起点として言及されているのが、『文藝春秋』平成9年3月号における櫻井よしこの石原信雄元官房副長官へのインタビューである。
以下、原文を掲載する。
【引用】
『月刊正論』2014年10月号
《緊急座談会》
ジャーナリスト 櫻井よしこ
ジャーナリスト 門田隆将
産経新聞政治部編集委員 阿比留瑠比
阿比留瑠比氏 慰安婦問題で河野談話がどのような経過で出されたのか。
そしてどういう影響をもたらしたのか。
これをはじめて明らかにされたのは櫻井さんでした。
文藝春秋平成九年三月号で元官房副長官、石原信雄氏へインタビューし、韓国で行われた慰安婦十六人の聞き取り調査では裏付け調査などが行われずに河野談話が出されたことなどをかなり詳細に明らかにされました。
当時、社会部記者だった私は上司の石川水穂元論説委員と一緒にこれを読み、石原氏の自宅に確認取材にでかけ、産経新聞でも報じました。
これが私が慰安婦取材に本格的に関わる切っ掛けにもなりました。
以来、17年が経ちましたが今、ようやく本当のことが明らかになりつつある。
そのことにある種の感慨を覚えています。
朝日新聞は八月五日からの二日間、それまでの慰安婦報道についての特集記事を掲載しましたが、謝罪はありませんでした。
また日韓関係に自らが及ぼした悪影響についても全く言及がありませんでした。
非常に不十分だったといわざるを得ません。
ただし、朝日新聞の正体を白日のもとに晒したとは思います。
櫻井よしこ氏 随分長期に渡って朝日新聞をウオッチしてきたという感慨は私にもあります。
私が「朝日はおかしい」と思い始めたのは七〇年代に遡ります。
例えば昭和五十年四月十九日夕刊にカンボジアのポル・ポトの革命について朝日の特派員は「アジア的な優しさを持つ革命」などと書いていました。
フランスなどのメディアはカンボジアから逃れてくる難民に国境でインタビューを重ね、すさまじい虐殺が行われていたことを周辺取材から明らかにしていました。
つくり話であるなんてあり得ない状況のなかで朝日だけは「粛清の危険は薄い」などと書いていたわけですね。
一九八六年にも印象に残る記事がありました。
石川巌編集委員が「深海流」というコラムで「スクリーンの金正日書記」と題して朝鮮民主主義人民共和国随一のシャレものが金日成主席の子息で後継者の金正日総書記だと書いています。
当時金正日総書記は四十四歳。
背が小さいことをカバーするためにハイヒールを履いているとか、ダンディぶりが明白だ、などと書いていました。
笑える記事の典型です。
朝日が韓国と比較し、北朝鮮をいつもいい国だと書いてきたことは、もう誰もが知っていますが、朝日新聞は一貫して左翼リベラリズムの流れに基づく報道を繰り返してきたわけです。
慰安婦報道もその流れのなかから生まれてきたといえます。
米国にもリベラリズムの勢力─例えば歴史学者のマサチューセッツ工科大学、ジョン・ダワー教授のような人物が代表的ですが─があって彼らは反保守でかつ反日的な言動で知られます。
こうした人々に朝日は次々と日本を貶める材料を与えてきた。
日米の左翼陣営が太平洋を越えてこの何十年間、連携し続けてきた。
そういう構図があります。
それが私達の暮らしにどのような貢献をしたのかといえば、不幸と不名誉しかもたらさなかった。
今回の慰安婦問題の特集記事を注意深く読みました。
自己弁護ばかりで本当の意味で反省など全然していない。
取り消したのは吉田清治氏の証言をめぐる記事だけでした。
九一年八月十一日、「従軍慰安婦」の初めての被害証言だとして報道した、自社社員の植村隆元記者の記事などは取り消していません。
最終的に朝日新聞自体に深刻な傷が及ばない形に取り繕ったといわざるを得ない。
左翼陣営のリベラル人士に共通する特徴ですが、彼らは概して卑怯です。
間違って済まなかったとはいわない。
むしろ、済まなかったという姿勢が全く感じられないのです。
門田隆将氏 日本と日本人を貶めてきた朝日の報道姿勢は首尾一貫して続いていると私は思っています。
今、櫻井さんから朝日は取り繕ってばかりで反省などしていないという話がありましたが、私には開き直りに思えました。
例えば、特集記事が掲載された朝刊一面で編集担当の杉浦信之氏は「慰安婦問題の本質、直視を」と題して「慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質」などと述べています。
慰安婦もそうですが、あの時代、さまざまな事情で身を売らなければならなかった薄幸な女性達が数多くいた。
そのことは誰もが認めており、私も含めて誰もが胸を痛める話です。
それは歴史の事実としてあるわけで争点でも何でもなかった。
ところが、朝日は「それが問題の本質だ」というふうに今、すり替えているわけです。
そうではなく、「従軍慰安婦」の本質的な問題とは、「強制連行」にあるわけです。
朝日新聞が、この女性達は日本軍と日本の官憲によって強制連行されたと報じたことによってこの問題が作り上げられたのです。
無理やり連れて行かれたのなら「拉致」であり、慰安所に閉じ込められたのなら「監禁」であり、望まぬ性交渉を強いられたのなら「強姦」ということです。
日本が世界中で拉致、監禁、強姦をした国などと言われなき非難を浴びている根源がここにあります。
それが朝日新聞の報道によってもたらされたことが問題の本質なのです。
そこを反省するのかと思ったら、そうではなくて、問題をすり替えてきたのです。
朝日にとって今一番悩ましいのはそうした日本や日本人を貶めてきた報道姿勢が満天下にバレかかっていることだろうと思う。
そこで自称・山口県労務報国会下関支部動員部長だった吉田清治氏をめぐる記事だけ撤回して何とか批判をかわそうとしている。
それが今回の特集記事なのだろうと思います。
この稿続く。