朝日新聞「慰安婦報道」検証における致命的な論理矛盾――宮澤喜一首相訪韓直前の1992年1月11日報道、吉田清治証言、そして記事取り消しの問題
朝日新聞の慰安婦報道検証をめぐり、1992年1月11日の「軍関与」報道と宮澤喜一首相訪韓のタイミング、吉田清治証言、記事取り消しの説明、さらに「他紙も報じた」とする論理の自己矛盾について、櫻井よしこ、阿比留瑠偉、門田隆将の発言を通して検証する。
2020年8月18日
本稿は、朝日新聞による慰安婦報道の検証をめぐって交わされた議論を記録したものである。
中心となるのは、1992年1月11日朝刊一面の「慰安所 軍関与示す資料」という報道が宮澤喜一首相の訪韓直前に掲載されたこと、その紙面で「軍関与」と「強制連行」が重なるような印象を生じさせたとの批判、吉田清治証言をめぐる検証と記事取り消しの説明、そして朝日新聞自身が他紙の報道を持ち出したことによって生じた論理上の矛盾である。
以下、原文をそのまま掲載する。
朝日慰安婦報道への検証記事の致命的論理破綻
櫻井 それこそ朝日の「賤技」だってわけですね。今回の慰安婦をめぐる朝日の検証記事も非常に狡猾です。1992年1月11日朝刊1面の記事「慰安所 軍関与示す資料」という記事に関して見てみましょう。
検証では「宮澤喜一首相の訪韓」の直前に報じることで政治問題化させることを意図したものではないと朝日は強調しています。しかし、タイミングは訪韓直前でした。今でも覚えていますよ。黒々とした大きな見出しで、「軍関与の資料見つかる」と一面トップで報じたのを。
阿比留 一面に6個も見出しがありましたよ。
門田 すごかったですねえ。
阿比留 あんな大きな記事ないですよ、普通。
櫻井 ところが、「軍の関与」というのはよくよく読んでみると、衛生に注意させるとか悪い業者を取り締まるといった内容でした。
阿比留 西岡力氏がよく言いますが「善意の関与」です。
櫻井 秦郁彦さんも「これはよい関与なのだ」と語っています。こういう関与なしには慰安所の管理はできなかったわけです。ところが、実際の紙面をみるとその関与のイメージが強制連行に重なるような書き方です。
阿比留 そうですね。この日の1面の下の方では「従軍慰安婦とは」とあって「主に朝鮮人女性でその数は8万とも20万とも言われ…女子挺身隊の名で強制連行し」と書いているわけです。たった10行ちょっとの短い原稿に3つも4つも間違いがあります。
櫻井 でも検証では、朝日の報道前に政府も文書の存在を把握していた、だから軍が関与したということを朝日が初めて政府に知らせたのではなく、このような資料があったことを日本政府も知っていたのだから、宮澤さんが韓国に行って動揺して8回も謝ったのは朝日の報道の責任ではないと言っています。これは本当にずるい逃げ方だと思いますね。
阿比留 当時の内閣外政審議室の資料を読むと、この朝日の報道で政府内が蜂の巣を突いたような大騒ぎになったという記述があります─政府の一部でああいう文書は当然当たり前の事実として把握していた人はいたのかもしれませんが─朝日の記事のような書き方で大変な騒ぎに陥ったことは間違いないのです。
櫻井 「済州島で連行」したとする吉田清治氏についても、朝日は済州島でも取材し裏付けは得られなかった─と書き、吉田証言が虚偽だという確証がなかったと言っています。「だから真偽は確認できないと表記した」と言うのですが、吉田清治の証言内容について、現地の人が誰一人「そういうことがありました」と言わないということは、吉田清治証言が本当ではないということの証拠ですよ。「吉田清治が言ったことは嘘です」とは言わなかったかもしれないけれども、「女性が連れていかれた、トラックでやってきて200人も無理やり掠っていった」といった話はないと言っているわけです。
ということは、吉田清治の書いたことは存在しなかったのですから、これは虚偽だということになりますが、ここも朝日は非常に苦しい言い訳で、「吉田清治の証言が当時は虚偽だということの確証がなかった」としています。一方で、いま証言は虚偽だと判断し、記事を取り消しますという結論を出しています。では彼らは虚偽だといつ判断したのか。それがこの8月5日でなければ、何年前だったのか、何十年前だったのか、その間彼らは何をしていたのか。全く言及がなく、さっぱりわからない。
阿比留 しかもこの記事がずるいのは、少なくとも16本の記事を書いてそれを取り消すと言っておきながら、具体的にどの記事を取り消すのか。記述がほとんどないことです。自分たちがどんな報道をしてきたのか。何を取り消して、何を残すのか。今の読者にはわからない形でこっそり取り消すわけですね。
櫻井 自分たちの間違いをなるべく知られたくない。出来るだけ隠したいという心理が読み取れますね。
門田 朝日新聞の特徴は、日本だけが悪いといえることを書く場合はとても一生懸命ですが、例えば今回の米軍相手の慰安婦122人が韓国政府を6月25日に提訴した出来事に対しては─これなどとても大きな出来事だと思うのですが─扱いは小さかったですね。
慰安婦のような存在はさまざまな国の軍隊で歴史的にありました。昔の十字軍には売春婦部隊がついていったというぐらい、すごく古い時代から古今東西存在しているわけです。それを日本だけのものであり、日本だけが悪い、と読者に思い込ませる報道をしてきたわけです。
阿比留 しかし、今回の特集で朝日は致命的な論理破綻を来しているのです。それは何か。今まで彼らは社説で慰安婦問題に関して、他の国にも同様な事例が仮にあったとしても、他の国が謝罪してないからといって、日本がそれで済ませていいわけはないと書いているんですね。しかし、今回彼らは「他紙の報道は」という欄でわざわざ他紙の報道を並べて「うちだけじゃないよ」と言わんとしていたわけですよね。
門田 それが今回の特集では「僕だけじゃない」といっているわけですね。
阿比留 そう。今まで自分たちは社説で「『僕だけじゃない』の理屈は通じない」と言っておきながら、自分の過ちには「僕だけじゃない」といっているような話です。