WGIPと戦後日本の歴史認識――江藤淳『閉された言語空間』、フーバー『裏切られた自由』、ルーズベルト政権と対日戦争をめぐる検証
GHQ占領下のWGIP(War Guilt Information Program)が日本人の戦争観と歴史認識に与えた影響を、江藤淳『閉された言語空間』を手掛かりに論じる。さらにハーバート・フーバー『裏切られた自由』や対日作戦計画をめぐる記述を引用し、ルーズベルト政権と日米開戦の経緯を再検討した論考。
2020年8月29日発信。
以下は前章の続きである。
本稿は、GHQ占領期に実施されたとされるWGIP(War Guilt Information Program)が、敗戦直後の日本人の戦争観と歴史認識にどのような影響を与えたのかを論じたものである。
江藤淳『閉された言語空間』を引用しながら、戦争責任、無差別爆撃、原爆投下をめぐる戦後の認識形成を問い、さらにハーバート・フーバーの回顧録『裏切られた自由』や、真珠湾攻撃以前の米国の対日作戦計画に関する記述へと論を進めている。
以下、2020年8月29日の原文を一字一句変更せず、そのまま掲載する。
2020-08-29
ショックと生活苦に打ちひしがれてはいたが、その時点までは「鬼畜米英」や「撃ちてしやまむ」等の記憶が残っていたから戦争への贖罪意識は必ずしも持っていなかった
以下は前章の続きである。
■ WGIPの実施
WGIPは、GHQの民間情報教育局から昭和23年(1948)2月6日付で日本に対す“極秘命”として発せられた。
日本人は戦争に負けたことのショックと生活苦に打ちひしがれてはいたが、その時点までは「鬼畜米英」や「撃ちてしやまむ」等の記憶が残っていたから戦争への贖罪意識は必ずしも持っていなかった。
また日本人としての誇りも気概も失ってはいなかった。
江藤淳・慶応義塾大学教授(当時)は、その著書『閉された言語空間』 (平成元年)の中で、「大東亜戦争は実際には日本国と米国が主導した連合国の間の戦争であったにもかかわらず、これを日本の“軍国主義者”対“国”の対立の中で生まれた侵略戦争であった」という虚構を植え付けようとするものであったと指摘した。
WGIPは、日本の敗戦も、無差別爆撃による非戦闘員の大量殺戮も、更には原爆投下も、すべて日本の軍国主義者の責任であって、米国はこれを懲らしめたのであるから何の責任もない、という図式を日本人に植えこもうとしたのだ。
しかし、開戦の事情については、ハーバート・フーバー第31代大統領(共和党2の回顧録『裏切られた自由(Freedom Betrayed)』(註2:フーバー大統領:米国の第31代の民主党大統領。フランクリン・ルーズベルトは次の第32代大統領。フーバーは大恐慌への対策に失敗したとして批判、1000ページ)が極めて貴重な事実を教えてくれる。
大統領にまでなって最高の機密にまで触れてきた人物の証言であるから、信憑性は高い。
ルーズベルトは極端な人種差別主義者であった。
黄色人種の日本人が、米国が遅れを取った中国大陸に先に進出して、満州国を建国し、更に大東亜共栄圏構想などという妄言を唱えて白色人種がせっかく築きあげた植民地を解放してアジア諸国を独立せしめよう、などと生意気なことを考えているのが我慢ならなかったのだ。それに、当時ドイツとの戦争に悩んでいたソ連から、強く対日参戦の要請があったこともある。
米国の歴史学者アラン・アームストロングは、真珠湾攻撃よりも実に5ヵ月も前に、ルーズベルトがコードネーム「JB―355」という対日作戦計画を承認していたと指摘している。
その作戦は、「米国が中国に350機の戦闘機と150機の爆撃機を提供して、蒋介石に米人パイロットを傭兵せしめて、中国大陸から日本各地に大空襲をかける」という計画だった。
しかし、欧州戦線が緊迫したので飛行機をそちらに回してしまって計画が遅延して、日本の真珠湾攻撃の方が先になってしまったものだ。この作戦の存在はフーバーも前掲の著書の中で認めている。
戦争を仕掛けて「平和の罪」を犯した真のA級戦犯はルーズベルトだったのだ。
この稿続く。