議決は問題だらけ…今週号の週刊朝日の続きです。
無効! 議決は問題だらけ 検察騒乱罪
検察審査会が出した「起訴議決」に、元検察官の郷原信郎氏は「明らかにおかしい」とあきれかえる。趣旨や手続きといった形式面から、政治資金規正法の解釈の仕方まで、そこにはいくつもの重大な問題が隠されているというのだ。
東京第五検察審査会が、小沢一郎氏に対する政治資金規正法違反事件について2回目の「起訴相当」議決を出しましたが、その議決書を読んで唖然としましたここには、いくっもの重大な問題があります。
私はこの2回目の検審は当然、4月に出された1回目の議決と同様の「被疑事実」で判断されたものと理解していました。しかし、2回目の議決書には、新たな「事実」が付け加えられていたのです。
1回目の議決書の「被疑事実」を見ると、おおよそこんなことが書いてあります 〈陸山会が平成16(2004)年10月に代金約3億4千万円を支払い、世田谷区の土地を購入したのに、会計責任者の元公設秘書大久保隆規、元私設秘書の衆院議員・石川知裕の2被告らと共謀の上、その年の収支報告書に記載せず、翌17年の収支報告書に土地を同年1月7日に取得したとして虚偽記入したー〉
この点はほとんど報じられていないが、要するに、不動産の取得時期と代金支払いの時期が2ヵ月ほどズレていた。これが政治資金規正法違反(虚偽記入)にあたり、小沢氏がこの違反に 「共謀」したという話です これが国会議員を起訴して処罰を求めるに値するような事案かどうかは冷静に考えてみる必要があると思いますが、いずれにしても今回、明らかになった2回目の議決書ではその内容がなぜか異なっていたのです。
今回の議決書に「別紙」として添付された「犯罪事実」を見ると、
〈被疑者(小沢氏)から合計4億円の借り入れをしたのに、平成16年分の収支報告書にこれらを収入として記載せず、同収支報告書の 「本年の収入額」欄に、過小の5億8002万4645円であった旨の虚偽を記入しー〉とある。
つまり、小沢氏から現金4億円か提供されたという、不動産取得の原資となった収入も含めて虚偽記入の犯罪事実として書かれていたのです。
私の理解では、検審の「強制起訴」という制度は、あくまでも検察の不起訴処分の不当性を審査するために設けられたものです。検察が不起訴とした事実について、検審が「起訴相当」の判断を2回すれば、裁判所が指定した弁護士による起訴(強制起訴)手続きをとることになります。
そう考えると、1回目の議決で「起訴相当」とされた事実について、検察が再捜査して再び「不起訴」とした事実の範囲を超えた事実を、2回目の議決で「起訴すべき事実」にするのは、検審の強制起訴手続きの趣旨からいっても、明らかにおかしいと思います。
検察が再捜査の対象にせず、当然、再聴取を受けた小沢氏にも弁解の機会を与
えていない「犯罪事実」が、突然現れて、それで起訴されるなんてことがあっていいわけがありません。ですから、私は今回のような場合、強制起訴はできないのではないかと考えています。もっとも、1回目の議決の範囲を超えた事実が2回目の議決に入る事態など予想されていませんから、検察審査会法上で「無効な議決が行われた場合の手続き」は定められていない。しかし、起訴議決が無効であれば、それに基づいて「検察官の職務を行う弁護士」を指定することは許されないはずです。
もし、それを許してしまうと、指定弁護士が検察官の権限を行使できることになり、被疑者の逮捕や家宅捜索を行うことも可能になるのです。それはあまりに不当だと思います。なぜ、こんな議決になってしまったのか理解できません。
ただおもしろいことに、この議決書の「犯罪事実」を見ると、石川議員の起訴状の犯罪事実と非常によく似ている。石川議員の起訴状に、一部加えて、一部削除していますが、それ以外はほとんど同じ表現です。起訴状を切り張りしている過程で、間違って「4億円の収入の不記載」の記載が残ってしまったのかもしれません。
そうだとすると、この犯罪事実は、審査会で議決した犯罪事実とは異なっているということになります。 先日、ネット討論会で、白民党副幹事長で弁護士の柴山昌彦議員とこの問題を議論しましたが、柴山議員は、別紙の犯罪事実が「間違っている」という見方でした。このままでは強制起訴手続きがとれないが単なる間違いだから、議決書の訂正(雨正)のようなことが可能かのではないかと言っていましたが、別紙の犯罪事実が間違っているのか、議決そのものが間違っているのかわからないので、訂正では済まされず、議決をやり直すしかないと思います。
ここまでは、手続き面、形式面の話ですが、もちろん議決内容についても問題があります。