共産主義革命が生んだ「90%の貧困、9%の特権、1%の権力濫用」――歴史は繰り返す
平等を掲げた共産主義革命が実際に生み出したのは、90%の人々が貧しく、9%が特権を握り、残る1%が権力を濫用する極端な不平等社会だった。
毛沢東の個人的な怨念、知識人への弾圧、周恩来との関係、そして現代の指導者を『三国志』の人物になぞらえる石平氏と竹内久美子氏の対話から、中国共産党支配の本質を明らかにする。
2020-06-25
共産主義革命は平等を目指していますが、結果的に生まれたのは不平等社会でした。
90%の人々が貧しく、9%の人間が特権を握り、残りの1%が権力を濫用する。
以下は前章の続きである。
歴史は繰り返す
石平
言い得て妙とはこのこと!
毛沢東がまさにそう。
青年時代、大知識人になることを夢見ていました。
さまざまな伝手を利用して、北京大学に潜り込みます。
ですが、毛沢東の当時の学力では、北京大学入学は夢のまた夢。
そこで大学の図書館館長、李大釗が、同じ共産主義者の誼もあり、毛沢東を司書補に引き立てます。
ですが、北京大学の学生たちは、地位の低い毛沢東に目もくれません。
女子学生も名家の出が多く、田舎出身の毛沢東など歯牙にもかけない。
竹内
非モテ男子だったのは間違いない。
石平
こういった屈辱的な経験を経て、毛沢東の思想の基礎ができ上がったと言っても過言ではありません。
「いつか出世して、お前たちを支配下に置く」と。
1921年、上海で中国共産党大会が開催されたとき、毛沢東は参加し、共産党に深くかかわるようになり、頭角を現していきます。
結果的に中国の最高指導者の立場になると、歴代の皇帝と同じようなことをします。
まずは手当たり次第、女性を自分のものにする。
そして、もう一つ、知識人を徹底的に弾圧したのです。
竹内
毛沢東革命は、いわば彼の個人的なルサンチマン(怨念)を晴らすためにあった。
高邁な理想の実現に燃える革命精神なんて、どこにも見当たりませんね。
石平
毛沢東の良き相棒として、周恩来がいます。
政治的女房役として、死ぬまで毛沢東に尽くしました。
文句を一切言わず、イジメられても逃げ出さない。
毛沢東からすると、これほど都合のいい僕はいません。
その証拠に、毛沢東は劉少奇や林彪、鄧小平らを政治的に迫害弾圧しましたが、周恩来にだけは一度も手を出していない。
竹内
いわば宦官のような存在だったんですね。
歴代皇帝の世界と何ら変わりません。
石平
そのように見ると、歴史は繰り返しているとも言えます。
『石平の裏読み三国志』(PHP研究所)を上梓しましたが、今の世界の指導者を三国志の英雄になぞらえると理解しやすい。
たとえば、曹操はトランプ大統領だと思います。
曹操は宦官の家系に生まれ、大きなコンプレックスを持っていた。
そのため、漢の時代で国教となっていた儒教の考えに反抗し、勢力を広げていく。
トランプも、いわば革命児。
アメリカの既成概念をひっくり返して、世界を驚嘆させている。
そういう意味で、曹操の生き方に近いな、と。
竹内
習近平は誰ですか。
石平
袁紹(えんしょう)です。
袁紹は名門出身ですが、優柔不断と先見性のなさで、最後は曹操に敗れます。
竹内
確かに習近平と似ていますね。
共産党の高級幹部出身ですし、政治的な決断力は弱い。
石平
わかりやすいでしょう。
竹内
生き物は智慧を絞って生き抜いています。
たとえば、セアカゴケグモのメスは交尾の最中、オスを食べてしまうことがある。
だから「後家」なんですが、クモは大人になるまで何回も脱皮を繰り返します。
そこで、オスはメスが最終脱皮する直前を狙うのです。
なぜなら、その段階だとメスの体は柔らかいうえに、まだ凶暴ではありません。
オスは精子を触肢にのせ、メスの体を突き破って送り込みます。
そういうやり方と普通の交尾との二段構えで繁殖します。
石平
人間の場合は、生存本能よりも自分のコンプレックスを優先させて、多くの人間を殺し、苦しめることがある。
竹内
権力者の立場になると、そういう〝悪〟を平然とできてしまう。
石平
ヒトラーがそうでしょう。
美術家になっていたら、のちのナチスドイツは存在しなかったかもしれません。
毛沢東も北京大学に合格していたら、中国人民は塗炭の苦しみを味わうことはなかった。
私は北京大学出身なので、大学の籍を毛沢東に譲りたい気分です(笑)。
竹内
でも、別の毛沢東が生まれていたのではないでしょうか。
石平
共産主義革命は平等を目指していますが、結果的に生まれたのは不平等社会でした。
90%の人々が貧しく、9%の人間が特権を握り、残りの1%が権力を濫用する。
本当に不自由な社会なのです。
竹内
そんな中国共産党の実態を、多くの日本人が認識すべきです。
コロナ禍における情報戦に負けないためにも、石平さんには、ますます精力的に発信し続けてほしいと思います。
石平(せき・へい)
1962年、中国四川省成都生まれ。
北京大学哲学部卒業。
四川大学哲学部講師を経て、88年に来日。
95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。
民間研究機関に勤務の後、評論家活動へ。
2007年、日本に帰化。
『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』で、第23回山本七平賞受賞。
『米中「冷戦」から「熱戦」へ』(藤井厳喜氏との共著、ワック)等、著書多数。
2017年より、自身のツイッターで本格的に写真作品を発表し、好評を得ている。
竹内久美子(たけうち・くみこ)
1956年、愛知県生まれ。
1979年、京都大学理学部卒。
同大学大学院博士課程にて動物行動学を専攻する。
1992年、『そんなバカな! 遺伝子と神について』(文春文庫)で、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」受賞。
ほかに、『フレディ・マーキュリーの恋』など多数。
共著に『「浮気」を「不倫」と呼ぶな』(川村二郎氏との共著/ワック)がある。