外交というポーカーゲーム—安倍外交、イラン交渉、そして朝鮮半島の危機
2019年7月5日発信。
月刊誌WiLL八月号掲載の石原慎太郎氏と亀井静香氏の対談をもとに、外交を「ポーカーゲーム」に喩えながら、日本・アメリカ・ロシア・中国・南北朝鮮の力学を鋭く論じた一篇。
安倍晋三元首相の対イラン交渉、文在寅政権への厳しい批判、中国の脅威、韓国の政治不安、そして日本が果たすべき歴史的役割まで、多面的に考察している。
2019-07-05
外交はポーカーゲームのようなものだ。
日本、アメリカ、ロシア、中国、南北朝鮮という五枚のカードがあったとしたら、どのように揃えるか。
以下は月刊誌WiLL8月号に、こっそり食べたチョコレートの鮮烈、体中が痺れたよ。
心底「ああ、日本は負けたんだ」と思ったね、と題して掲載された石原慎太郎と亀井静香の連載対談からである。
前文省略
亀井
運輸大臣になったとき、すでに故人だった両角先生の自宅を訪ねて、仏前で手を合わせた。
「一昨日、運輸大臣の辞令をいただきました」と。
今の自分がいるのは両角先生のおかげだ。
ただ、高校三年のとき肺浸潤を患って、思うように勉強できなくなった。
それで一年浪人して、東大に入ったんだ。
石原
僕も一年浪人している。
湘南高校だったけど、戦前・戦中は海軍兵学校に行って立派な海軍士官になるために一所懸命勉強しろと言っていた。
ところが、敗戦になった途端、「東大に行って、大蔵省に入り役人になれ」と言い出す。
大蔵省理財局長、横浜銀行頭取の経歴を持つ伊原隆こそ出世頭だと。
「くだらない学校だな」と思って、登校拒否になった。
勉強できる奴らは、みんな東大に入って官僚になった。
僕が大臣になった後、書類を持ってくるのはそいつらだった(一同爆笑)。
亀井
石原さんの同窓会に連れていってもらったけど。
石原
みんな老けたな。
一人だけ商社でイランの油田開発にかかわっていた人間がいた。
イラン革命によって、すべてが無に帰したけど、淡々としていた。
そんな中、狂犬のような亀ちゃんが闖入してきたものだから、みんなびっくりしていたよ(笑)。
亀井
私か歌うとキョトンと……。
石原
事前に「亀井君の歌を聴いて驚くなよ」と通告していたけどな(笑)。
歌というより演説だよ。
亀井
石原さんは音感がないから困る(笑)。
私の歌を聴いた女性は、みんな涙を流す。
石原
同情の涙だよ。
でも、一度でいいから、亀ちゃんの歌声をNHKで流してほしい。
亀井
今に見てろ、紅白で歌ってやろうか(一同爆笑)。
外交というポーカーゲーム
石原
話は変わるけど、安倍君はイランとの交渉をトランプに頼まれただろう。
これは大変な重荷を背負わせられたよ。
亀井
しかも、トランプは参議院選挙が終わったら貿易交渉を再開すると予告した。
本当にふざけている。
石原
安倍君と会食したとき、地位が人をつくるとつくづく実感したな。
老練になってきた。
亀井
それは間違いない。
ただ、トランプやプーチン、習近平、金正恩と対峙して、バカにされるようになったら大変だ。
石原
外交はポーカーゲームのようなものだ。
日本、アメリカ、ロシア、中国、南北朝鮮という五枚のカードがあったとしたら、どのように揃えるか。
スリーカードができればいいけど、日本はなかなか三枚揃えるのが難しい状況だ。
特に南北朝鮮に関しては、文在寅というバカを処理しないと、どうしようもない。
自分がバカなことをしている自覚もないからな。
アメリカもまったく相手にしていない。
米韓会談でワシントンに文在寅が行ったけど、カミクズみたいな扱いだった。
亀井
文政権を支えているスタッフは学生運動あがりばかり。
つまり、革命政権なんだ。
今、アメリカと北朝鮮が直接交渉に入ってしまい、文政権は蚊帳の外に置かれている。
だから、韓国は日本じゃなく、アメリカに対して牙をむけばいい。
「何もアメリカに守ってもらわなくてもいい。
北朝鮮と仲良くやるから、帰ってくれ」と言えるくらいの度胸がないと。
そうすれば、アメリカも少しは大事にしてくれる。
おんぶにだっこで気持ちがいいという顔をしているから、韓国は独り立ちできない。
石原
アメリカに隠れて北に援助しているんだろう。
支援金として約八百万ドルを投資するそうだ。
これ以上のことをしたら、アメリカだって黙ってはいない。
亀井
下手したら軍事政権になる可能性もある。
石原
韓国の戦後の歴史は、すべて軍がつくってきた。
尹漕善政権を倒したのが、軍事政権の朴正煕だ。
全斗煥も軍を使ってリベラル勢力を弾圧した。
南が北に呑み込まれたら、立つ瀬がないのは南の軍隊だ。
軍によるクーデタが起こるかもしれない。
亀井
火病と言われるほど激しやすい民族だから、それは十分あり得る。
石原
朝鮮半島は紛争地(フリンジ)で、常に国家は分裂の憂き目にあい、後方の大国に支配されてきた。
そのため、民族精神は卑屈で右顧左眄しやすく、権威に弱い。
三木武夫が“バルカン政治家”と言われたけど、それと同じく韓国人の話もクルクル変化する。
財閥を増長させたのは、韓国人の民族性に依るものだ。
軍隊の権威に追従するのは目に見えている。
独立は日本のお陰
亀井
このままでは、北主導で韓国が呑み込まれる日もそう遠くないだろう。
石原
かつて「北朝鮮は理想の国だ」と、バカなことを言った日本のインテリたちがいた。
大江健三郎もその一人だ。
この発言の責任をどうやって取るつもりなんだろうか。
亀井
それと中国の脅威も重要な課題だ。
日本人は中国の土地を取得できないのに、中国人は日本の土地を自由に売買できる。
こんなバカげたことはない。
相互主義で行かなくては。
石原
安倍君に「法律を変えて規制したらどうか」と話したら、「そうですね」と生半可な返事だった。
亀井
そういう法律をつくっても、誰も文句を言わないんだから。
安倍政権はすでに六年が過ぎ、分岐点に来ている。
石原
国会の惨状はどうだ。
維新の丸山穂高の失言ばかりを取り上げて、リンチみたいにつるし上げ、直ちに進退判断を促す「糾弾決議案」を採決する。
確かに発言は褒められたものじゃないが、弱い者イジメみたいでおかしいよ。
亀井
言論の自由があるんだから、それで懲罰に掛けるのはな。
石原
丸山は東大出身で経済産業省の官僚だった。
頭は良くてもバカな発言をする典型だな。
確かに戦争で北方領土を奪われたことは確かだ。
その悔しさもわかる。
「戦争」という言葉を使うなら「経済戦争で勝てばいい」と言えば良かったんだ。
亀井
戦争で奪われた領土は、戦争で取り返すのが、人類の歴史の必然だ。
石原
確かにいつかロシアにほえ面をかかしてやりたいと思うが。
今、痛快なのが、EU離脱を巡るイギリスの凋落ぶりだ。
大航海時代、冒険家のキャプテン・クックとスタンレーがアフリカと太平洋の島々をすべて植民地化した。
どこへ行ってもイギリスの植民地が広がり、「太陽の沈まない国」とまで豪語した。
今のザマはどうか。
本当に惨憺たるものだ。
歴史において間違った行為をした国は、しっかり報復されるんだよ。
歴史の原理があるかどうかわからないが、非道は通らない。
亀井
日本も似たところがある。
白人たちが支配していたアジア諸国を日本は解放した。
まさに“聖戦”だ。
ところが、その後、各国が民族的に独立するのを日本が援助するべきだったのに、帝国主義のマネをした。
石原
そんなことはないよ。
高碕達之助さんの紹介で、ナセル(エジプト)やスカルノ(インドネシア)の両大統領に会ったことがある。
二人とも「我々が独立できたのは、日本のお陰です。
日本が西洋列強と戦って頑張ってくれたから、我々も見習って独立戦争を戦い抜くことができた」と言っていた。
亀井
そういう見識があったのか。
この稿続く。