新型コロナで露呈したEUの無力――WHOだけではない、国際機関の敗北
2020年3月10日。新型コロナウイルス感染拡大により、WHOだけでなくEUの機能不全も露呈した。マスク調達、国境対応、経済支援のいずれでも加盟国は自国優先に走り、EUの結束は空虚な言葉に終わった。
2020-03-10
「中国寄り」と批判された世界保健機関(WHO)だけではない。
欧州連合(EU)が、まるで機能していない。
以下も今日の産経新聞からであるが、三井美奈記者は、現役最高の女性特派員の一人である。
拡大阻止 EU機能せず
新型コロナウイルス感染がどう展開するにせよ、国際社会の「敗者」が、国際機関であることは間違いない。
「中国寄り」と批判された世界保健機関(WHO)だけではない。
欧州連合(EU)が、まるで機能していない。
公衆衛生では加盟国政府が第一に対応に当たるが、2013年のEU法により、EUにも大きな権限が与えられた。
09年の新型インフルエンザ流行時、域内で約2千人が死亡したことが教訓になった。
欧州委員会は、国境を越えた危機評価と対応が可能。
医療品を一括調達し、感染が深刻な国に優先配分することもできる。
今回は、まずイタリアで感染が拡大し、EU全域に広がった。
感染者は1万人超。
まさに「欧州の実力」が試される機会である。
EUは6日、緊急の保健相理事会を開いた。
イタリアで医療用マスクが払底する中、EUによる一括調達が議題になった。
だが、ドイツとフランスは応じなかった。
スロベニア出身のレナルチッチ欧州委員、危機管理担当、は「これでは、みんなで危機対応ができない」と嘆いた。
ドイツは自国からのマスク輸出を禁止し、フランス政府は政令で国内の在庫を差し押さえたまま。
独仏は共通外交や経済策では「EUの結束」を求めるが、いざとなると自国優先が露骨になる。
理事会は「結束こそ、EU市民の健康を守る最善策」というむなしい声明を出して、終わった。
感染対策で最初に焦点となったのは、国境検問を廃止した「シェングン協定」の扱いだった。
EUは「移動の自由は変えない」ことを決め、各国はそれぞれ自衛策に走る。
オーストリアは、イタリア国境で健康検査を開始。
仏国鉄はイタリア行き国際列車について、フランス人職員が国境で下車する措置をとった。
最大の不安は、感染拡大による経済的な打撃に対し、EUからほとんどメッセージが出ないことだ。
イタリア政府は5日、75億ユーロ、約9千億円、の緊急対策予算を組むと発表した。
各地で工場が止まり、景気が冷え込む中、「国民の雇用を守る」と訴えた。
米国が決めた緊急予算の83億ドル、約9千億円、に匹敵する規模。
イタリアはEUでギリシャに次ぐ重債務国で、一国で背負う負担はあまりに大きいが、支援の手は届かない。
EUは「ユーロ圏の規律に縛られず、赤字財政を認めてよい」とするだけだ。
イタリアの右派野党「同盟」のサルビーニ前内相は、「財政均衡ばかり気にして、庶民の生活や雇用を後回しにするなら、EUはもう死んだも同じ」と批判した。
新型コロナウイルス感染で、EUたたきの右派ポピュリスム、大衆迎合主義、が再び勢いづく。
欧州各国で感染拡大への不安は日々広がり、スーパーの棚からトイレットペーパーや缶詰が消える。
フォンデアライエン欧州委員長はEUの取り組みを示そうと、対策チームをメディアに披露して裏目に出た。
EUカラーの青いベストを着た職員が、庁舎のコンピューターの前に座って情報収集する様子は、ネット上で「まるで旧ソ連の役人」「こんなときにネットサーフィンか」と冷笑された。
ブリュッセル官僚と庶民の遠い距離。
またも鮮明になった。
パリ支局長。