安倍晋三は国際政治のキープレイヤーたり得るか—イラン仲介外交と令和日本外交の真価
2019年7月9日発信。
本稿は、月刊誌Hanada八月号掲載の堤堯氏と久保紘之氏の対談を通じて、安倍晋三総理によるイラン仲介外交の意義と危うさを論じたものである。
米国とイランの双方から仲介を求められた背景、トランプ政権下での日本外交の立ち位置、ホルムズ海峡をめぐる日本の国益、そして令和の日本外交が国際政治の中でいかなる存在感を持ち得るのかが語られている。
安倍外交の現実主義と、日本が世界をリードし得るかを考えるうえで示唆に富む一篇である。
2019-07-09
前任のオバマは安倍がプーチンや習近平に会うと嫌な顔をして、ああだこうだと邪魔をしてきた。
ところが、トランプは嫌な顔一つしないんだってね。
以下は月刊誌Hanada8月号に、「私がポスト安倍だ」バカだな、枝野は、と題して掲載された堤堯氏と久保紘之氏の連載対談からである。
堤堯氏の事も古田博司氏同様に朝日新聞を購読していた5年前の8月までは全く知らなかった。
初めて知った時に、何故か、ひょっとしてと思って検索したら、やっぱり、彼は、私が永遠に愛する母校の先輩だった。
私は彼が先輩であることを誇りに思う。
前文省略
国際政治のキープレイヤー
編集部
安倍総理がイランを訪問しましたが……。
堤
これはアメリカとイラン双方から仲介を頼まれた。
五月にイランの外相ザリーフが来日して安倍に会った。
通常なら、カネをもらいに来日するのが多いんだけど(笑)、今回はそうじゃない。
時あたかも、イランはアメリカと睨み合いの真最中だ。
アメリカは空母エイブライムを中心とする打撃群を地中海からペルシャ湾に回し、対してバグダッドのアメリカ大使館近くで爆弾テロがあったり、ホルムズ海峡ではイランと敵対するサウジアラビアやアラブ首長国連邦のタンカー四隻が破壊攻撃を受けたりと、ただならぬ状況だ。
トランプもイラン大統領ロウハ二も、「戦争するつもりはない。
できれば話し合いで解決したい」というけど、偶発的なキッカケで戦争になりかねない一触即発の状態だ。
そんな時期にザリーフがやって来た。
安倍にトランプへの仲介を頼みに来たわけだ。
トランプの来日はそのあとで、トランプもまた安倍にイラン訪問を提案して仲介を頼んだ。
聞いた話では、前任のオバマは安倍がプーチンや習近平に会うと嫌な顔をして、ああだこうだと邪魔をしてきた。
ところが、トランプは嫌な顔一つしないんだってね。
トランプにすれば、安倍を使えるカードと考え、アレコレ文句をつけずに自由に動かしているつもりなんだろう。
トランプはワンマン経営者で、それなりに人の動かし方が分かっている。
くらべてオバマはせいぜいハーバードの学生新聞の編集長を務めたくらいで、人の動かし方を知らないんだな。
安倍のイラン訪問前、アルジャジーラは「今後の展開は安倍待ちだ」と報じている。
これまでの日本の総理や外相で、双方からこんな役割を頼まれ、期待された政治家がいたか?
まさしく国際政治のキープレイヤーで、凄いことだよ。
久保
令和の日本外交が化けつつある。
その認識は、自民党の夏の参院選の公約で外交・防衛を第一の柱に掲げ、貿易や環境など地球規模の課題解決に向け「日本が世界をリードする」と強調した点にも表れています。
でも今回の仲介にしても、うまくいかなかった場合の影響もまた大きいから、安倍は大変だ。
堤
難しい役割だよ。
だいたい、喧嘩の仲裁役は力がないと務まらない。
日本に武力はない。
なのに双方から仲介を依頼されたのは、安倍の存在感がそうさせたというしかない。
とはいえ、できることといえば、双方を話し合いの場に導くことぐらいかな。
いまのところイランの最高指導者ハメネイは、アメリカとの話し合いは毒だとして拒否している。
久保
安倍だって、この仲介がそう簡単にはいかないこと、その場合の内外のリアクションくらい先刻織り込み済みで引き受けたわけでしょう。
日米同盟の深化によって令和の日本外交の基軸がより盤石になったのはたしかだが、一方で既成の国際秩序の破壊者と映るトランプの外交が他の同盟国にとって脅威であることも事実。
安倍としては日米同盟の深化と同時に、そこから一歩距離を置くスタンスを示さないと、国際政治における仲介の役目は果たせなくなる。
特に日本とイラン両国は九十年近い友好関係にあり、日本の石油子不ルギーの重要な供給国である。
だから、日本へのタンカーが八〇%通過するホルムズ海峡が封鎖されるという事態だけは何としても避けたい。
それでもアメリカとイランが一触即発の軍事的緊張状態にある以上、海峡封鎖の事態に備え、石油・天然ガス子不ルギー大国アメリカをはじめ他の供給先を確保しておかなければならない。
いまトランプの使い走り役を引き受けて貸しを作っておけば、トランプも最優先で日本に廻してくれるだろうー
おそらく、安倍の頭のなかにはそうした計算ができているんでしょう。
本来、そういう役回りはアメリカの古くからのパートナーであるイギリスが引き受けていたんですけど、いまの体たらくじゃ務まらないからなあ。
この稿続く。