二大政党制は日本に馴染まない—堤堯が岸信介との議論と英国政治の迷走から説く国家運営の現実

2019年7月9日発信。
本稿は、月刊誌Hanada掲載の堤堯氏と久保紘之氏の対談を通じて、日本に二大政党制が根づかない理由を、戦前日本の失敗、戦後の自民党体制、そして混迷する英国政治を踏まえて論じたものである。
岸信介元首相とのやり取りを交えつつ、政権交代の在り方、保守政治の柔軟性、多党化が招く統治機能の低下などが率直に語られている。
日本の政治風土と議会政治の現実を考えるうえで示唆に富む一篇である。

2019-07-09
俺は「二大政党制は実験済みで、日本の民族性に合わない。
戦後の復興をやったのは自民党の一党支配だ。
政権交代は自民党のなかでやっていれば足りる」と言った。
以下は前章の続きである。
二大政党制は馴染まない
堤 
イギリスはいよいよ落ち目になってきた。
日本の政治家や学者はみんなイギリスの議会政治を範とし、理想の政治家はチャーチルで、なにかといえば二大政党制を目指せと言ってきたけど、いまやイギリスは二大政党制どころか多党制になって久しい。
久保 
イギリスを範とする考えは、尾崎咢堂らのような政治家ばかりでなく、もっと遡って福澤諭吉や夏目漱石から始まったことで、幅広く日本人の意識に浸透しているんですよ。
僕だって、二大政党制がいいと考えていますよ。
古くから、二大政党制なら小選挙区制、多党制なら比例代表制が有効と言われてきました。
たとえばイギリスの小選挙について、ハロルド・J・ラスキは「選挙の目的は正確な国民代表議員を確保することにあるのではなく、選挙人がもっとも好む内閣に権力を与えることだ」。
つまり統治機能と安定性を重視するなら、「小選挙区制。二大政党制」というパターンのほうが適している、と一応言っている。
でも堤さんが指摘されるように、本家本元のイギリスでも、いまや二大政党制による議会政治はスムーズに機能しにくくなって多党化しつつある。
原因の一つは大衆民主主義の進展で、国民の意識が多様化したため、とされます。
では、比例代表制による多党制がいいかというと、現実には小党乱立で統治機能は一層低下し、政治の不安定化が進む。
そのことは、いまの枝野の立憲民主党をはじめとする日本の野党の体たらくを見れば容易に想像がつく。
現にイギリスは二年前、二大政党制の是非を問う国民投票をしたけど、イギリス国民は二大政党制の継続を選択しています。
だけど、どういうわけか日本では二大政党制は成功しないんだよな、風土的に合わないというか。
堤 
日本にも戦前、二大政党制があった。
民政党と政友会だ。
ところが、互いにスキャンダルの暴き合いをやって歯止めがかからない。
結果、軍部の乗ずるところとなって、八月十五日の敗戦となった。
日本の民族性からして馴染まないんだよ。
前にも話した記憶があるけど、二大政党制の是非をめぐって岸信介と議論したことがある。
俺は「二大政党制は実験済みで、日本の民族性に合わない。
戦後の復興をやったのは自民党の一党支配だ。
政権交代は自民党のなかでやっていれば足りる」と言った。
岸は「自民党の左と社会党の右がくつ付いて新党をつくり、二大政党制になればいい。
一党独裁だと、どうしても垢が溜まるからねえ」と言う。
で、俺は「垢が溜まって死ぬ人間はいませんよ」と返して、二人で大笑いした(笑)。
自民党という、民主主義と自由市場経済の二つを掲げる風呂敷のなかで、A派とB派が政権交代をやっていればいいのよ。
事実、それをやっていた五五年体制は結構うまくいっていたじゃないか。
これからもそれを続ければいいんだ。
それにしても、保守党党首を辞任したメイはひどいものだね。
彼女のやり囗を見ていると、ガキの頃に読んだ動物実験を思い出す。
ガラス板の向こう側にエサを置いておくと、ネズミはひたすらガラスに鼻をぶつける。
くらべて猫は一度ぶつけるとちょっと考えて、ぐるりとガラス板を回ってエサにたどり着く。
メイはネズミだな。
なにしろ同じようなEU離脱法案を三度も出して否定され、四度目も出そうとして 閣内や与党から支持を失い、辞任に込まれた。
久保 
面倒な法案に関しては、院内総務みたいな汚れ役の引き受け手が裏で手を回し、時には汚い手も使って通すものなんですけど、メイにはそういう存在がいなかったんだろうな。
堤 
さらにお粗末なのは、彼女の後継者を決める保守党党首選だ。
できそうもない公約を競って並べ立てる。
あげくは、過去に麻薬を常習していたことがバレる候補者も出てきてテンヤワンヤだ。
いまのところブックメーカーによると、合意があろうがなかろうが十月三十一日には離脱する、と主張するボリス・ジョンソンがトップを走っている。
この稿続く。

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