トヨタを罵ったニューヨーク・タイムズと米国イエローペーパーの系譜|高山正之が暴く米国報道の歪み
2019年7月15日発信。
NHKがトランプ大統領を窮地に立たせる大ニュースのように報じたニューヨーク・タイムズの記事をきっかけに、米国報道の本質を問う章。
高山正之氏の論考を通じて、トヨタのブレーキ問題、米国メディアの歪んだ報道、ニューヨーク・タイムズ、AP通信、ピューリッツァー、コロンビア大学ジャーナリズム大学院に連なる捏造報道の系譜を批判する。
2019-07-15
トヨタを罵ったNYタイムズ…日本だったら、偽計業務妨害でオバマもおばさんも手が後ろに回っていた。
昨夜、NHKの19時のニュースで井上あさひが冒頭から大ニュース扱いでトランプ大統領が絶体絶命の窮地に立たされているかのように報道したニュースソースは彼らが大好きなニューヨークタイムズの記事だったのだが。
しからばニューヨークタイムズとは、どんな新聞なのか?
以下は戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之の近作で日本国民全員…特に朝日新聞を購読しNHKを視聴しているだけの国民は全員必読の書である。
米国でトヨタのブレーキ問題が起きた時、たまたま、米国中西部のおばさんが証言していた映像を見た私は、これがインチキ話である事を即座に理解した。
何故なら当時の私はドライバーでもあったからである。
見出し以外の文中強調は私。
トヨタからカネを奪った米イエローペーパーの横暴。
12億ドルを脅し取った事件で見せた米紙の歪んだ報道。
「暴走プリウス」をテレビ中継。
「トヨタ車が暴走する」と運輸長官ラフードが非難したのは、5年も前になる。
彼の発言を機に米国内でレクサスやプリウスがやたら暴走を始めた。
どこかのおばさんのレクサスはアクセルを踏まないのに、時速160キロに跳ね上がって死ぬ思いをしたとか。
カリフォルニアでは暴走プリウスを急報で駆け付けたパトカーが並走し、「落ち着いて。
さあギアをニュートラルに」と実況生中継もあった。
南イリノイ大のデービッド・ギルバート准教授はプリウスが暴走する様を分析、勝手に跳ね上がるタコメーターの映像をABC放送で流した。
かくてトヨタ車の売れ行きは落ち込み、米議会は豊田章男社長を呼びつけ、米市民が50人も死んだ、さあどうしてくれると脅し上げた。
トヨタ車は国家道路交通安全局に持ち込まれ、徹底的に調べられた。
どんな車だって少しは異常がある。
もしくは因縁がつけられる。
80年代、米国でバカ売れしていたドイツ車アウディがこの精密検査で不具合を見つけられ、販売台数は一挙に85%減。
事実上、米市場から追い出されてしまった。
その穴をGMやフォードが埋めて立ち直る。
いつも通りのシナリオだった。
しかし彼らにとって残念なことにトヨタにこれっぽっちの瑕疵も見つからなかった。
米政府はNASAに持ち込み、さらに1年かけて調べたが、無駄だった。
一方、暴走レクサスはおばさんがフロアマットを2枚も余計に重ねる馬鹿をやっていたことが分かった。
暴走の実況生中継をさせた男もトヨタからカネを強請るつもりで、故意に暴走させていたことが露見した。
トヨタを罵ったNYタイムズ。
南イリノイ大の先生も訴訟屋にカネを積まれて嘘のデータをでっち上げていたことを認めた。
しかし、その2年間でオバマが期待したようにトヨタは全米でのシェアを落とし、GMは復活した。
日本だったら、偽計業務妨害でオバマもおばさんも手が後ろに回っていた。
人種偏見を交えてあれだけトヨタを罵ったニユーヨーク・タイムズなど米紙もまず謝罪だろうが、だれも謝らず、だれも捕まらなかった。
米市民はそろってとぼけ通す気なのかと思っていたら、先日、トヨタがこの件で12億ドルを米連邦検察庁に払うことで和解したと新聞にあった。
日本人は驚く。
「米国がトヨタに支払う」の間違いではないのか。
これでは詐欺師に追い銭だろう。
AP通信のエリック・タッカーが、この摩訶不思議を解説していた。
「米市民の1人として穴があったら入りたい」と書き出すのかと思ったら、これも外れた。
見出しは「トヨタ幹部の起訴は難しい」だと。
「米検察当局はいう。
トヨタは全社を挙げて危険な欠陥を隠そうとしていた。
これ以上、口裏を合わせているとみんな逮捕するぞと脅し上げたが、結局、12億$のペナルティを科すだけで逮捕には至らなかった」「背景には奸智に長けた日本企業の複雑な機構があって、だれが責任を持つのかも分からなかった」。
「フロアマット」に因縁をつけ。
まるでトヨタがこすからい犯罪企業のような書き方だ。
で、何を隠したというのか。
トヨタは「アクセルペダルの潤滑油が固化して戻らなくなる可能性」「一家4人が死んだサンディエゴ事故の原因(アクセルペダルの下に折れ込んで暴走を引き起こした)フロアマットの問題」をあやふやにしてきたという。
ちょっと待て。
韓国車やアメ車じゃあるまいし、潤滑油固化なんてトヨタにそんな初歩的ミスがなかったことはNASAが調べてとっくに証明されている。
問題は「フロアマット」だ。
これは二昔前、ジョージア州であったカローラの追突事故訴訟が発端だ。
前方不注意が原因なのに運転者は「アクセルが戻らなかった」とトヨタを訴えた。
事故車の科学的な検証でアクセルが正常だと分かると、原告はブレーキ故障だったといい直した。
トヨタがそれも科学的に否定すると、彼は「フロアマットが折れ込んでアクセルが戻らなかった」と絡んできた。
トヨタもそんな嘘まで科学的に反論できなかった。
米連邦地裁はそれを見て嬉しそうにトヨタに200万ドルの賠償を命じた。
以来、米国での日本車への因縁は「フロアマット」に決まった。
タッカーはむしろ米国だけで起きるフロアマットの折れ込みを気候や風土、米国人の民度から解説すべきだった。
もっといえば、こんな国とTPPを結んで公正に話ができると信じている日本人の甘さを指摘してほしかった。
ところで、この人種偏見に満ちた解説を書いた男は、それでもコロンビア大のジャーナリズム大学院を出ている。
これはニューヨーク・ワールド紙の経営者ジョセフ・ピューリッツァーの遺志で創設された最初の「まともなジャーナリスト」育成のための大学院だ。
捏造報道はコロンビア大から。
ピューリッツァーの新聞はイェローペーパーと呼ばれ、下品で差別的な偽りの記事であふれていた。
UFOもこの新聞の捏造だし、日清戦争では「日本軍は旅順の街で女子供など6万人を残忍に殺した」と、ジェームズ・クリルマン特派員に報じさせた。
ベルギー大使A・ダネタンが「日本人を貶める偽りの報道」と否定して日本は救われたが、彼の新聞はそういう悪意ある偽りの報道に満ちていた。
彼は死ぬ前に前非を悔い、米紙が習い性としている捏造報道を改めさせるべくコロンビア大に新聞記者のための大学院を開設し、いい記事を書いた記者にはピューリッツァー賞を贈るようにした。
タッカーも含め、いまのジャーナリストの多くはこの大学院を出ている。
それでこのざまだ。
山口百恵風にいえば「坊や、いったい何を教わってきたの」。
(2014年5月号)