高山正之「知らないイラン」|パーレビ、ホメイニ、革命防衛隊、そして朝日新聞の誤り

2019年7月25日発信。
週刊新潮7月25日発売号に掲載された高山正之氏の連載コラム「変見自在」から、イラン近代史と日本との関係を論じる。
パーレビ皇帝、日本の三菱双発輸送機「そよかぜ」、イスラム勢力、ホメイニ師、革命防衛隊パスダラン、ハメネイ師への経済制裁、日本タンカー攻撃、朝日新聞社説への批判を通じて、現代イランの本質を考える。

2019-07-25
米国がモスクの親玉ハメネイ師に経済制裁を科したが、対象の個人資産が十数兆円超もあったのはそういう背景があるからだ。
以下は7/25発売の週刊新潮に掲載された高山正之の連載コラムからである。
この論文も、彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであるとの私の評の正しさを完璧に証明している。
知らないイラン。
日本とイラン(ペルシャ)には深い誼があった。
1939年、皇太子モハメド・パーレビとエジプトの王女フォージエの結婚式に日本は三菱双発輸送機「そよかぜ」で天皇特使をテヘランに派遣した。
独、伊などからも慶祝の特別aieplaneが飛んできたが、パーレビには日本機に特別の感激があったという。
イラン人は西欧人と同じアーリア系なのに妙に差別されてきた。
白人なのにイスラムというのも嫌われる理由の一つで、ハリウッド映画「300」はイランを魔物の国に描いている。
侮蔑は現代も生きる。
結婚式の翌々年、独がソ連に侵攻するとソ連への物資輸送に便利だからと連合軍はイランを占領し、父レザ・ジャーはインド洋に島流しにされた。
そこらの土人国並みの扱いだった。
傲慢な白人が世界を仕切る中で、日本は自力で工業化を果たし、白人しか作れない飛行機まで作ってここに飛ばしてきた。
日本機は「イラン王室の特別要請で結婚祝賀の分列飛行に特別参加」(大日本航空社史)している。
パーレビ自身も特別な体験がある。
父を追放された後、彼は連合国管理下で皇帝に即位する。
昭和16年末、その挨拶回りを終えてパンアメリカン機で帰国の途次、あの真珠湾攻撃に遭遇する。
乗機はハワイ島ヒロに降りるが、彼はそこでいつも偉そうに振る舞ってきた白人どもが青ざめ逃げ惑う姿を確かに見た。
戦後、パーレビは祖国を停滞させてきたイスラムの縛りを断って「アジアの西の日本たれ」と工業国化を推し進めた。
当時の農民は税を免れるため農地をモスクに寄進してその小作人になっていた。
モスクは肥えていた。
米国がモスクの親玉ハメネイ師に経済制裁を科したが、対象の個人資産が十数兆円超もあったのはそういう背景があるからだ。
近代化にモスクは財政上も障害だった。
皇帝は当時のモスクの親玉ホメイニ師と深刻に対立した。
欧米はしかし皇帝を見捨てた。
中東に「日本」は要らない。
お前らはイスラムの澱にまみれ、石油だけ出していればいい。
ホメイニ師の抵抗はむしろ歓迎され、国外追放された師の説教はBBCが丁寧にイランに流し続けた。
かくてパーレビが逆に国を追われた。
ホメイニ師はモスクの財産を守り切ったが、それで満足はしなかった。
オレたち坊主でこの国を乗っ取ってみるか。
彼の手先になったのがシーア派狂信者集団、革命防衛隊パスダランだった。
彼らは敵対する共和党派を殺しまくり、企業も大学も役所も支配下に置いた。
その上で「イスラム坊主を指導者と崇め、民は良きイスラム信者となる」憲法草案を国民投票にかけた。
もし通ればコーランに従い飲酒、賭博が禁じられる。
女は髪も素顔も夫以外に見せてはならない。
何より不倫をすれば最も残酷な石打刑に処される。
民はそっぽを向いたが投票に前後してパスダランが米大使館を占拠し、館員を人質に取った。
米のミサイルが今にも飛んできそうな不安が覆う中で国民投票は「坊主専制憲法は99・8%の民が承認した」と発表された。
インチキだと言えば即座にしょっ引かれて殺された。
翌日から本当に不倫女が公開処刑され、酒を隠し持った男が鞭打たれた。
それがもう40年続く。
日本人が知るイランはとっくに消え去っていた。
イランの新しい顔パスダランは先日、日本のタンカーを爆破し、米軍の無人偵察機を撃ち落とした。
英夕ンカーを拿捕した。
彼らの狂気はまだ健在なことを示している。
ボルトンは狂気の宗教支配に抗う市民を支援してきた。
「ハメネイが国を変えないなら政権を転覆させるしかない」と公言もした。
あのときホメイニ師を黙認した米国にも一端の責任があると考えている。
この問題を朝日新聞の社説は「トランプが悪い」と書く。
それはちょっと違う。

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