デフレ脱却まで消費税増税を延期せよ――岩田規久男氏が示すアベノミクスの成果と増税の危険
2019年8月15日発信。
岩田規久男・日銀前副総裁が『Voice』8月号で示した経済指標をもとに、民主党政権時代とアベノミクス5年間の成果を比較する。
企業収益、失業率、有効求人倍率、実質雇用者報酬、実質GDPの改善を踏まえつつ、2014年の消費税増税が個人消費を冷やし、物価目標2%達成を妨げたと指摘する。
米中貿易戦争で輸出が不安定化する中、デフレ脱却まで消費税増税を延期すべきだと訴える論考。
2019-08-15
企業収益・売上高経常利益率は4.9%から7.9%へ。
失業率は4.3%から2.8%へ。
正社員民間企業有効求人倍率は0.5%から10.9%へ。
実質雇用者報酬の増加率は1.3%から4.2%へ。
それでなくとも、米中貿易戦争で輸出が不安定になっていくことが予想されるのに、国内の個人消費を冷やす政策をとっていいのか。
と題して2018-08-14に発信した章である。
以下は前章の続きである。
●デフレ脱却まで増税延期を明言せよ
国内回帰を促す場合、真っ先に見直されるべきは財政政策、特に消費税だ。
日銀前副総裁の岩田規久男氏が『Voice』8月号において、経済指標に基づいて民主党政権時代とアベノミクスの五年間を比較した表を作成している。
それによれば、企業収益・売上高経常利益率は4.9%から7.9%へ。
失業率は4.3%から2.8%へ。
正社員民間企業有効求人倍率は0.5%から10.9%へ。
実質雇用者報酬の増加率は1.3%から4.2%へ。
年平均実質GDP増加額は3兆3900億円から7兆9820億円と、ほぼ倍になった。
アベノミクスで市場に資金が回り、企業の業績が改善、人手不足から失業率が低下し、代わって有効求人倍率が跳ね上がり、雇用者の実質所得が増え、国民の総生産も倍増したわけだ。
にもかかわらず、物価目標2%を達成できていないのは、消費税を増税したからだ。
岩田前副総裁はこう指摘する。
《2014年の5%から8%への(消費税の)引き上げは、1997年の3%から5%への引き上げよりもダメージが大きい。
なぜなら日本ではデフレが20年も続いた結果、非正規雇用者・低所得者層が増加したからです。
2014年の引き上げは、消費税の増税に最も弱い人びとの家計を直撃してしまった。
この悪影響が現在も尾を引いているわけです》
消費税増税が家計を直撃し、個人消費を抑制してしまった。
岩田前副総裁は《「増税で消費が冷え込んでも、デフレに戻らない」という確信がないかぎり、消費税の増税は再延期すべき》と主張する。
だが、政府は6月15日、来年10月から消費税率を10%に引き上げることを謳った「骨太の方針」を閣議決定した。
それでなくとも、米中貿易戦争で輸出が不安定になっていくことが予想されるのに、国内の個人消費を冷やす政策をとっていいのか。
何よりもハイテク企業の国内回帰を促進させるつもりがあるならば、安倍政権には、デフレ脱却まで消費税増税は延期するという明確な指針を示してもらいたい。