頼清徳氏が示した台湾民主主義と日台友好――東日本大震災直後に仙台へ駆け付けた次期副総統

2020年2月17日発信。
産経新聞に掲載された台湾の次期副総統・頼清徳氏へのインタビュー記事を紹介する。
東日本大震災直後、台南市長だった頼氏が市民の募金を携えて仙台を訪問し、さらに風評被害に苦しむ日光を支援した事実を踏まえ、日台関係、台湾の民主化、新型コロナウイルス問題、WHOからの台湾排除、中国による選挙介入について論じる。

2020-02-17
東日本大震災直後の2011年4月、台南市長だった頼氏は、市民の募金を自ら持参して友好関係にある仙台に駆け付け、被災者たちを直接見舞った。
以下は今日の産経新聞に掲載された台湾の次期副総統 頼清徳氏へのインタビュー記事からである。
読書家の友人が、私が読み忘れているといけないからとメールで送ってくれた。
この記事の前文を書いている矢板明夫は当代最高の現役記者の一人である事を証明していた。
台湾の民主化 世界が評価
親日的といわれる台湾の与党、民主進歩党の中でも、頼清徳氏は日本との関係を最も重視する政治家の一人として知られる。
東日本大震災直後の2011年4月、台南市長だった頼氏は、市民の募金を自ら持参して友好関係にある仙台に駆け付け、被災者たちを直接見舞った。
さらに2カ月後の同年6月、台南市民ら約300人と一緒に同じく観光交流のある栃木県日光市を訪問。
当時の日光市は放射能汚染の風評被害で観光業が大打撃を受けていた。
悪い噂を打ち消すことが訪問の目的で、先頭に立った頼氏は「行こう日光」と書かれたTシャツを着ていた。
日本に対して理解があり、日本の政界、財界に知己が多い頼氏が副総統に当選したことは、今後の日台関係に大きなプラスになることは言うまでもない。
5月20日に就任する予定だが、それまでは、頼氏は一人の民間人にすぎない。
本来ならば、日本を訪問することは外交上何の問題もなく、中国から文句を言われる筋合いはない。
現に頼氏は2月上旬に米首都のワシントンを訪れ、米国の要人と会談している。
しかし、日本政府や外務省の中には、中国を刺激することを恐れ、特に習近平国家主席の国賓としての訪日への影響などを考慮して、台湾との要人交流に反対する勢力がある。
頼氏の日本訪問が実現できるかどうかは、今のところ流動的だと言わざるを得ない。
中国発の新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本と台湾が連携して対応することが必要だ。
次期副総統であると同時に、公衆衛生の専門家でもある頼氏の訪問を受け入れることは、世界保健機関(WHO)のメンバーではない台湾への支援であり、日本の国益にもかなう。
ぜひ実現してほしい。
(台北 矢板明夫)
主なやり取り
―訪米の成果は
頼清徳次期副総統
台湾の次期副総統として先日、米国内外の政財界人が招かれる大型会合「ナショナル・プレイヤー・ブレークファスト」に出席した。
多くの友人と会談した。
現地のシンクタンクが主催するディスカッションにも参加できた。
中国発の新型コロナウイルスの感染拡大問題で、米国各界から「台湾のWHO加盟を応援する」との言葉を頂いた。
収穫の多い旅だった。
訪米が実現したのは、台湾の民主化の成果が世界で高く評価された結果だと考えている。
-訪日の計画は
頼氏
多くの日本の友人から「就任前にも来てほしい」と誘われている。
とてもありがたく思う。
ただ、今のところ具体的な計画はない。
台湾と日本の友好関係に利することであれば、なんでもやりたいと考えている。
将来、機会があれば、ぜひ行ってみたい。
台湾と日本の関係をさらに発展させるためにやれることはまだたくさんある。
産業交流はいま民間主導だが、サポート態勢を構築すれば、さらに良くなる。
台湾人も野球が大好きなので、カナダのチームが米大リーグに参加しているように、台湾のチームも日本のプロ野球リーグに参加できれば面白い。
―新型コロナウイルスの感染拡大について
頼氏
元医師として高い関心を持っている。
中国の不透明かつずさんな対策を憂慮している。
発表されている感染者数や死亡率などは本当なのか。
外国の専門家を受け入れず、詳細な情報を明らかにしないため、ウイルスの発生源、感染ルートなど不明な点が多すぎて有効な対策が取れない。
世界中が迷惑している。
それと、武漢などの都市を強引な形で丸ごと閉鎖するやり方は本当に有効なのか。
深刻な人権侵害が起きている。
悲惨なニュースを目にするたび、心配と同情の気持ちで心が痛む。
―中国はWHO問題などで台湾排除をしている
頼氏
自国内で大混乱が起きているのに、中国当局は台湾をいじめることをやめようとしない。
軍用機を台湾周辺に飛ばし、中間線を越えて軍事的緊張を作り出している。
国際組織からの台湾排除にも躍起になっている。
台湾はいま、WHOや国際民間航空機関(ICAO)のメンバーにもなっていないので、最新の感染情報も人的往来の情報も入ってこない。
こんなことをするのは人権を無視する独裁国家だけだ。
世界は中国の本当の姿を知ることができたのではないか。
―中国は台湾の選挙にも介入したが
頼氏
2018年の統一地方選で、中国による介入がひどかった。
その経験を踏まえ、今回、今年1月の総統選はネット上の監視体制、資金の流れのチェックを強化し、新聞には偽ニュースを指摘するコーナーを作るなど、しっかりと対策を取ったので、中国による介入の影響をある程度抑えることができたと考える。
それよりも、私たちが史上最高の得票で勝利したのは、民進党政権の改革姿勢が評価され、「香港のようになりたくない」という台湾の有権者が民主主義を守ろうとした意思を示したからだと考えている。
(聞き手 矢板明夫)

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